2022年3月、Googleからユニバーサル アナリティクス(以下UA)の計測終了が発表され、次世代のGoogle アナリティクスであるGoogle アナリティクス 4 プロパティ(以下GA4)への注目がますます高まっています。
複数の求人情報メディア・人材紹介サービス等の運営を行なうエン・ジャパン株式会社様では、同社が運営する求人サイト「エンゲージ」において、他に先駆けてGA4導入を進められました。
今回は、同社で「エンゲージ」のGA4導入プロジェクトを推進された3名のご担当者様と同部門の部長(執行役員)を囲み、座談会形式でインタビューを行いました。導入に至った背景や実際に操作されたご感想、GA4への今後の期待などを伺いました。
※今回のインタビューは、エン・ジャパン株式会社様のご協力の下、緊急事態宣言・まん延防止等重点措置の期間外に、新型コロナウイルス感染予防対策ガイドラインに準拠して実施致しました。マスク不着用の写真は飛沫や呼気等に十分注意して撮影しております。
エン・ジャパン株式会社
デジタルマーケティング部
デジタルプロダクト開発本部
執行役員 田中 奏真様
データサイエンスグループ マネージャー 松尾 祐太郎様
データサイエンスグループ チームリーダー 柴本 海人様
データサイエンスグループ チームリーダー 鶴谷 明久様
御社「エンゲージ」へGA4を導入いただきましたが、導入を決定いただいた背景や経緯をお聞きしてもよろしいでしょうか?
田中様:当社はオンライン広告の運用を数多く手掛けています。その効率化のため、Google アナリティクス(以下GA)のデータを活用しています。
GA4が約2年前に登場した時、機械学習が非常に強化されるという話があったため、GA4への移行を念頭に置いた上で早い段階から情報収集を始めていました。その時は、最終的に導入するかどうかはまだ決めていなかったのですが、UAが終了する話を受けて、期限を決めて移行の準備を進めていきました。
松尾様:担当者の間では「新しいプロダクトは、これまでよりもさらに価値があるものだね、ぜひ移行していきたい」といった意見交換をしていました。
移行の決め手になったのは、田中が言うようにUA終了の発表です。そこから本腰を入れて準備を進めて行きました。
柴本様:GAのデータをTableauに連携して分析する機会が増えていたので、「今のままだとGA4に移行した際にデータ連携ができなくなる」といった危機感がありました。
管理画面上にUA終了のアラートが出た時は、いよいよやらなければならない時期が来たと実感しました(笑)
エン・ジャパン株式会社 (左から)鶴谷 明久様、柴本 海人様、松尾 祐太郎様
鶴谷様:私は違う部門から異動してきたばかりのタイミングでGA4移行のプロジェクトに参加したため、従来のUAと新しいGA4を両方使えるようになる必要がありました。
以前の部門では社内のデータを扱うことが多かったのですが、現在の部門に異動してからは扱うデータの幅が広がり、知らないものが出てきて楽しいと感じています。知的好奇心を刺激されて飽きません。
田中様:Googleのプロダクトは指数関数的に進化していますよね。GA4はどんどん機能が追加されていくだろうなと予想ができました。
UAの終了は一つのきっかけではあったのですが、GA4を導入する・しないの選択ではなく、導入してからどう活用するか、どうスピードを上げるかといったことが重要ですね。
イー・エージェンシー:ご担当者様間で、どのようにデータを使っていくかという議論をしていただいたのですね。
田中様:デジタルマーケティング部とプロダクト企画開発部で合わせて数十人がGAを扱っています。誰か一人のトップがGA4移行を決めたのではなく、「自分のところはGA4を入れたほうが事業やサービスが伸びるよね。ユーザーにとっても良いことができるよね」とそれぞれが現場で判断をして、その結果、導入を進めていくと課題が見つかり、会話が生まれる。そういう好循環ができていると思います。
エン・ジャパン株式会社 田中 奏真様(右)
GA4導入はどのような体制で取り組まれましたか?
松尾様:この3人(松尾・柴本・鶴谷)がメインでGA4導入プロジェクトに関わっており、事前準備の段階からイー・エージェンシーさんと進めていました。
田中様:我々は「エンゲージ」の他にも複数のサイトを運用しているのですが、全サイトを一気に進めるのは難しかったので、まず1サイトを選び、先行して導入を進めました。
松尾様:仮に全サイトをGA4に移行するにはどうしたらいいのか、何を準備したらいいのか想定できませんでしたので、まずは、データ活用を進めていきたいと考えていた「エンゲージ」でGA4導入を進めることにしました。「移行したらどうなるのか」「どういうものが必要になるのか」といった検証が重要だったためです。このように「エンゲージ」で実験的に移行・検証を進めた上で、別のサイトにもどんどん展開していきました。
田中様:ある意味これもテストマーケティングですよね。すぐに実験するというのがエン・ジャパンの良さだと思っています。導入するための準備を始めたら、足りないところや大変なところがわかりますからね。
柴本様:本当に実験してみて良かったですね(笑)
松尾様:一度に全サイトは無理だったと思いますね。移行に取り組んでいた2021年当時は、まだGA4の情報も少なかったですし。1サイト目の経験を他サイトに反映できたのが良かったと思います。
イー・エージェンシー:まさにおっしゃっていただいたように、弊社でも、移行を進める際には一旦、データ取得要件が多いサイトを試験的に導入いただき、やるべき項目を洗い出すところから始めていただいております。他サイトへの展開は、そのラインナップの中から移行すべき項目を取捨選択して進めていくようおすすめしています。まさに御社の進め方は理想的だと思います。
田中様:1サイトやってしまえば、他のサービスをGA4に移行する際も別の担当者を立てて教えながらできます。別の担当者の知識もアップしますし、リソースも強化されますからね。
松尾様:パートナーさんに全てお任せするやり方もありますが、その分、社内が知識不足となり、自社でいざ施策をしようと思った時に、何から取り組んだらいいのかすらわからなくなる可能性もあります。
パートナーさんと伴走しながら進めて、社内で理解できる人を増やしていくというやり方がベストだと実感しています。
お客様ご自身でGA4のプロパティ作成と基本計測を導入(弊社ではこれら計測基盤の各種設定を「ベーシック導入」と呼称しております)をされたと伺っています。
-準備したものや導入期間についてお聞かせください。
柴本様:最初に行ったのは、UAで使用している情報を全て洗い出して、リスト化することでした。単純にUAからGA4に移行するだけでなく、設定されている項目の要・不要を一つひとつチェックして、いらない項目を整理していきました。
準備期間と実装を併せて、おおよそ3ヶ月~半年ほどです。(※2021年に実施)
-弊社制作のGA4導入手順書である「スタートガイド」を見ながら進めていただいたとお聞きしました。是非、感想をお聞かせください。
※スタートガイド……GA4の具体的な実装方法やデュアルタギングの方法について詳しく解説したイー・エージェンシーオリジナルの手順書。イー・エージェンシーからご契約いただいているお客様にご提供している。
柴本様:スタートガイドを見ながら移行を進めていたところ、ガイドに載っている情報と実際のGA4の画面が異なるケースがたびたびあると気が付きました。GA4はそれくらい早いスピード感で進んでいるプロダクトなんだ、と実感しましたね。 アップデートによって見栄えが変わった部分は、都度都度イー・エージェンシーさんに教えてもらって進めていました。
田中様:スタートガイドが良かったです。今後は、初心者向けウェビナーが増えると、スタートガイドの理解促進につながると思います。
GMP プレミアムサロン(Google アナリティクス 360 ご契約社様限定のデータ活用支援情報サイト)の中で、閲覧しておくと良いコンテンツをピックアップしてもらえるとさらに嬉しいです。
ベーシック導入の次のステップである「アドバンス設定※」を弊社にご依頼いただきありがとうございました。サーバーサイドGTM(以下 sGTM)にも対応し、カスタマイズさせていただきましたが、イー・エージェンシーのコンサルティングはいかがでしたか?
※アドバンス設定……カスタムディメンションやキャンペーンパラメータの計測といった固有の設定
松尾様:イー・エージェンシーさんは、専門知識と技術力が高いなと思っています。
私たちはマーケターなので、sGTMなどシステムが関わるといった部分には、まったく知見がありませんでした。わからない部分を問い合わせるとすぐに詳しく回答してくれて、その回答内容も理解しやすかったですね。そういった一連のコミュニケーションがとてもありがたかったです。
柴本様:イー・エージェンシーさんには、プロジェクトの初期段階から助けていただいています。
一部、Google タグ マネージャー(以下 GTM)の設定をインハウスで行いましたが、その際も不明点が出るたびに問い合わせ、常に伴走してもらいながら進めていました。
イー・エージェンシーさんは社内ではないけれどすぐに助けてくれる、そういう距離感がありがたかったです。
鶴谷様:毎週定例でミーティングを行っていたのが良かったですね。
テキストでは時間がかかるコミュニケーションもミーティングなら数分で理解できます。また、やり取りをイー・エージェンシーの方にドキュメントで残してもらえる点がとても良かったです。
ミーティング中は理解したつもりでいるのですが、後からわからないことが出てくる場合もあります。
例えば、UAの機能がGA4ではこうなりましたよ、など資料にまとめていただいていたのが役に立ちました。それを見ながら、前回は「エンゲージ」ではこのように対応したから、他サイトで移行するとしたらここはこう対応するといったように、自分たちで紐解けたので、とても助かっています。
松尾様:移行のプロジェクトもガントチャートで進めていただいていたんですが、私たちはそれに沿って動けばよいのでスムーズでした。イー・エージェンシーさんにリーダーシップをとってもらって助かりました。
イー・エージェンシーさんは、受発注の関係を超えて、私たちのやりたいことにコミットいただけていると感じています。「データを活用して、どう成果を出していくか」という私達の目線で、同じ方向を向いていただけているので、コミュニケーションが取りやすかったです。
GA4導入後、実際に使われてみていかがでしょうか? ご感想や良かったポイントなどをお聞かせください。
田中様:現在、導入の仕方や準備の仕方ではなく、どうやって活用するか、というステージに議論が移っているので、やはり導入して良かったですね。導入したからこその議論ができますから。
こうした議論が生まれていること自体に価値があると思っています。
松尾様:今は、GA4からBigQueryにデータをエクスポートして、そこからSQLでデータを抽出したり、機械学習のデータに流したりといった活用の段階に進んでいます。
今までは、アクセスログと自社のデータベースのデータを掛け合わせた分析ができていなかったのですが、今後もっと活用していきたいと考えています。
鶴谷様:GA4を使ってみて、BIツールやデータポータルのように、UAよりももっといろいろなデータ分析ができそうだと感じました。UAではカスタムセグメントが多すぎて私には使いづらかったのですが、GA4はシンプルになって使いやすくなった印象です。
柴本様:探索レポートがデータポータルに置き換わったらよいのにと思ったりしています。
GA4にどのような期待をされていますか?これから使ってみたい機能、取り組んでみたい施策や分析方法などがありましたら、お聞かせください。
松尾様:今後は離脱予測などを行っていく予定です。
これまで鶴谷を中心にPythonでライブラリを利用した離脱予測を実施していましたが、GA4ではもっと簡単にできるようになったので、データ分析のハードルが下がりましたね。
今後もどんどん拡張していくんじゃないかと期待しています。データエンジニアだけでなく、マーケターやデータ分析担当者にも機械学習という新たな武器を投入できると思っていますので、とても楽しみですね。
鶴谷様:自社で扱うサイトが複数ある中で、今後どうやって組織で標準化していくか?と考えた時、GAという社内の皆が使うツールにそうした機能があると、いろいろな場面で助かりますよね。全てのSQLを自分達で書いていくのは難しいですから……どんどん使っていきたいと思っています。
田中様:あとは、ユーザーを中心とした測定に期待しています。
仕事探しをWebとアプリを横断して行うケースが増えているので、1ユーザーの情報を横断して取得できるのは当社のビジネスにとって重要度が高いですね。
また、アプリはリピートしやすいデバイスだと思っています。アプリを導入してもらえば継続利用しやすいので、どうやってその状態を作るか、さらに、いかにして使い続けてもらうか。GA4はこういった分析を行うための基盤だと思っています。
松尾様:今後は、アクセスログのデータとCRMデータを掛け合わせるといった分析を行っていきたいですね。そのために、色々なところにあるデータを一箇所に集めて活用できるデータレイクのような状態を作りたいと考えています。
鶴谷様:この担当者3人で協力して必要な情報が取得できるようになり、インハウス化が進んでいるなと感じています。GA4を使うことで、目的に応じた必要なデータをさっと取得するといったように、データが簡単に選べるようになるのではないかと感じています。これまではあまりBigQueryを活用できていなかったのですが、社内でも活用が広がっており、今後の可能性を感じますね。
GMP プレミアムサロン(Google アナリティクス 360 ご契約社様限定のデータ活用支援情報サイト)はご活用いただいておりますでしょうか?
柴本様:GMP プレミアムサロンは日頃からよく見ていますよ。
田中様:今回のGA4導入はこのメンバーで行いましたが、今後登場するであろう未来のツールに対しては入社1、2年目の新人クラスが推進できるようにしていきたいと考えています。
そうした時、GMP プレミアムサロンという学べる中心点があるのは非常にいいと思います。
GMP プレミアムサロンはアップデート情報などが更新されていますし、インハウスでデータ活用に取り組むためのコアとなる「トレーニング動画」もあります。
例えば新人が複数人チームに参加した時、全員が同じレベルの知識を身に着け、業務を行うための基盤作りに役立つコンテンツとして有効だと思いますので、今後も活用していきたいですね。
柴本様:これから欲しいコンテンツとしては、例えばGAを全く知らない人がチームに加わった時、「これを見ておいてね」と渡せるようなセットがあると嬉しいですね。
GMP プレミアムサロンにあるコンテンツを事前に閲覧することで、普段の業務にも役立てられます。また、定例会などの前後で目を通しておくといいコンテンツを示していただければありがたいです。
これからは、特にGTMの社内理解や啓蒙も進めていきたいので、GTMのコンテンツが充実するよう期待しています。
鶴谷様:今回、「エンゲージ」へのGA4導入支援で行っていただいた内容のリバースエンジニアリングをお願いしたいですね。「この過程ではこういうことをやっています」など教えていただけると、他サイトで導入する際に、社内にも展開しやすいので。
イー・エージェンシー:GMP プレミアムサロンをご活用いただきありがとうございます。たくさんのご期待に添えるよう、これからもコンテンツを充実させてまいります。
これからGA4を導入される他の企業に向けて、メッセージやアドバイスなどをお願いします。
田中様:GA4に限らず、新しいツールは導入前後の学習コストがめちゃくちゃかかります。
だからこそ、とにかく早く着手した方がビジネス上の競争優位性が高まります。導入が決まっているのであれば、とにかく早く着手したほうがいいと思いますね。
さらに、着手が決まっているなら、新人マーケターや1、2年クラスの人材にプロジェクトリーダーを任せてしまうのがいいんじゃないでしょうか。
その子達が試行錯誤して学んだ後、数年後に来るであろう大きなアップデートに対応できるチームに成長しているはずですから。
ずば抜けて得意な人が全部一人で推進していくという進め方よりも、プロジェクトチームを作って、誰かをリーダーに立ててまずは任せてみる。
そのくらいの時間はまだ残っていますから、今のうちにやってみるといいんじゃないでしょうか。
あとは、イー・エージェンシーさんに何をすればいいか聞いて、言われたことをとにかくちゃんとやることです。プロが言っているんですからその通りやらないと。我流を突き通して本末転倒になってはいけないと思いますね。
最後に、今後イー・エージェンシーに期待されることをお聞かせください。
田中様:今後、イー・エージェンシーさんには、「ユーザーや事業のために、これをやらないといけないですよ」といった率直なアドバイスを、パートナーシップの観点で言い続けてくださることを期待しています。
その際に、エン・ジャパン側の都合やリソースがないんじゃないか、といった遠慮は不要だと思っています。
貴重なご意見をいただき、誠にありがとうございました。今後も引き続きデータ活用の推進パートナーとして伴走し、課題の解決に向けてお役に立てたらと考えております。これからも引き続きよろしくお願いいたします。
中央ロゴの左より、エン・ジャパン株式会社 田中 奏真様、柴本 海人様
中央ロゴの右より、エン・ジャパン株式会社 松尾 祐太郎様、鶴谷 明久様
株式会社イー・エージェンシー 田中 亨(最右)、久多良 圭太(最左)
今回はエン・ジャパン様に、同社で運営する求人サイト「エンゲージ」にGA4を導入された経緯や、今後のご活用に関する展望などについてお話を伺いました。
イー・エージェンシーは、Google アナリティクス 360の導入・運用およびデータ活用において、APACでもトップクラスの実績を持つGoogle公認リセラーです。これまで培ってきた豊富な知見をもとに、Google アナリティクス 4 プロパティ(GA4)の導入・運用や、Google Cloud(Google Cloud Platform/GCP)によるデータ統合、広告連携、アトリビューション分析、広告やメールなど顧客へのアプローチ施策の効果改善など、データ活用全般を支援いたします。