ビジネス情報サイト『ダイヤモンドオンライン』を運営する株式会社ダイヤモンド社様は、国内メディア企業の中でも先行してGoogle アナリティクス 360 を導入すると同時に、DMPとの連携も進めるなど、常に先進的な取り組みを行っています。約100年続く日本を代表するビジネス系出版社は、これからウェブ上でどのようにその価値を高めようとしているのでしょうか。
ダイヤモンド社様では現在、Googleが提供するメディア向けの広告管理アドサーバーであり、Yield Optimizationプロダクトである「DoubleClick for Publisher」と、Google アナリティクス 360 を連携し、自社メディア収益の最大化に取り組まれています。
ダイヤモンド社様におけるデジタルマーケティング推進のキーマンである真中氏にこれまでの取り組みと今後の展望についてお話を伺いました。
紙の世界では強みであった”コンテンツの質” ”ユーザーの質”がデジタル、ネットの世界だと強みを活かしきれていないことが本質的な課題です。広告事業においても、ユーザーへの課金事業においても同様です。また現状デジタルの収益の柱であるプログラマティックによる広告収益については、ページビューを稼ぐことが収益最大化の近道となってしまうのですが、ページビューを追求すると質の低下は避けられない、でもコンテンツの質は低下させたくない、という迷路にはまりこんでいました。
もともと弊社はマーケティング文化が弱く、マーケティング施策の企画、実施出来る人材も限られていました。単純にデータを可視化するだけでは、どうしても施策検討や社内調整の時間が掛かるし、データの活用も出来ないと想定されました。この課題を解決するために、データを収集と施策を線で繋いで設計、実施出来る環境の構築を目指しました。
結果としてサイトデータ、ユーザーデータについてはGoogle アナリティクス 360とDMP(Rtoaster)で取得、取得したデータをアドサーバ「DoubleClick for Publisher」に連携するという環境になりました。
また環境構築と同時にメディアとして「ユーザーを知ること」「広告主を知ること」、「PDCA文化を浸透させること」この3つのことを意識するところからはじめました。正直環境構築よりもこちらの方が難易度が高かったです。
単純なイールドマネージメントさえ出来ていなかった状態だったので、まずは枠単位での配信最適化を行いました。DFPの配信データをTableauに連携して、広告枠に何がどのくらい配信されていて、どの程度収益を生んでいるのか?を可視化出来る状態にしました。これにより、純広告、タイアップ誘導、ADEX、自社広告の配信方法のモニタリングを日次単位で行えるようになりました。6月にこの取り組みを開始して、広告収益は前年度2倍以上伸ばす事に成功しています。
また360 とDFPの連携活用により、ページ単位での収益額やeCPMを見て記事単体の評価が出来るようになりました。マクロな記事カテゴリーでの収益からミクロなページ単位での収益までの可視化しています。また、360のカスタムディメンションで取得している記事の公開日付とADEXの収益を分析することにより当該月に公開された記事が当月収益の何%を占めているか?というデータや、長期間安定した収益を産み出す記事やカテゴリーの分析も出来るようになっています。こちらについてはデータの活用はまだまだなので、編集部と共同して記事制作に活用出来ればと考えています。
もうひとつは、ユーザーデータを活用した広告商品の開発です。比較的簡単にオーディエンスデータと広告枠との組み合わせの設計が出来るので、現状はテスト的にPMPに商品を出したり、一部のクライアント様とテストマーケティングをしている段階です。
オンラインメディアとして、ユーザーにどのような価値を提供していくのか?広告主にどのような価値を提供出来るのか?をしっかりと考えメディア作りをしていきます。変化の激しいネット環境では非常に難しいと思いますが、10年、20年続くオンラインメディアにどうやったらなれるか?を地道に実践していきます。来年には会員サービスのリニューアルを予定しており、現状の環境を活かして、ダイヤモンド社の持つコンテンツをしっかりとユーザーに届けていければと思います。
<質 対 量>の議論に答えを出していくにはデジタルマーケティングは出版社にとって絶対的に必要な要素だと思います。ただ紙の文化で事業を行ってきた出版社にとっては、デジタル、WEBの世界だけで分断してデジタルマーケティングを進化させてしまうことは得策ではないとも考えています。出版社の本来の強みを活かすためにも、雑誌、書籍の事業とWEBの事業とのバランスを取りながら進めていく必要があります。デジタルマーケティングはマーケティングとして捉える必要があり、今後の事業戦略と並行して議論していく取り組みだと考えています。
【取材先】
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