「アプリデータの正しい見方がわかりません」「アプリとウェブの計測仕様は同じですか?」--Google アナリティクス 4 プロパティ(以下GA4)のアプリ計測に携わる方から、私たちは日々このようなご相談を数多くいただいています。多くの担当者は、まず公式ドキュメントやヘルプページで解決策を探しますが、なかなか答えにたどり着けません。
なぜなら、GA4のアプリ計測には、公式ドキュメントだけでは把握しきれない独自の「仕様」が存在するからです。独自の「仕様」を理解することが、正確なデータを得るのに欠かせません。本記事は、そうした課題を抱えるあなたのために、プロの知見と実際の事例に基づいた「正しいアプリ計測」のヒントを提供します。
GA4でアプリ計測をしているお客様から「計測に問題が起きている」、「この機能が利用できない」といったご相談をいただいた時、最新のFirebase 向け Google アナリティクス SDK(以下、Firebase SDK)の最新バージョンを利用することで問題が解消することがあります。
例えば以前リリースされたGA4の管理画面からイベントを作成する機能は、iOSの場合Firebase SDKのバージョン8.3.0以上、Androidの場合はバージョン19.0.2以上で利用が可能であるとGoogleからアナウンスされています。
また、2024年にGoogle アナリティクスの有料版(GA360)では、アプリのイベントパラメータで計測できる文字数の上限が緩和され500文字まで計測可能になりましたが、こちらもiOSの場合Firebase SDKのバージョン10.20.0以上、Androidの場合はバージョン21.5.1以上をご利用の場合に適用されることがわかっています。
常に最新のFirebase SDKを利用することは運用の都合上難しいと思われますが、新機能や直近のアップデートを反映させるためにも、可能なタイミングで最新のバージョンを利用するようご検討ください。
なお、最新のFirebase SDKのバージョンアップに関する状況は、下記リリースノートにて公表されています(新しいバージョンが公開されたタイミングで更新されています)。
【iOSはこちら】Firebase Apple SDK Release Notes
https://firebase.google.com/support/release-notes/ios
【Androidはこちら】Firebase Android SDK Release Notes
https://firebase.google.com/support/release-notes/android
アプリ計測を開始する際、どのGA4で計測するかを悩まれているお客様から、「1つのアプリを複数のGA4で計測することはできますか?」とご質問をいただくことがありますが、こういった計測は基本的にはできません。
というのも、GA4でアプリ計測を行うには、下記のすべての対応を実施する必要があります。
①FirebaseプロジェクトとGA4を連携する
②アプリをFirebaseプロジェクトに登録し、設定ファイル(※)を取得する
③Firebase SDKをアプリに実装し、設定ファイルをアプリに設置する
上記作業を行う際、1つのアプリに設置できるFirebaseプロジェクトの設定ファイルは1つという制限があります。また、Firebaseプロジェクトは1つのGA4としか連携ができない仕様です(FirebaseプロジェクトとGA4は1対1の関係です)。そのためアプリ計測を開始する際は、1つのプロパティでしか計測できないことを念頭に置き、どのGA4で計測するかを事前に検討しておく必要があります。
※設定ファイル…Firebaseの管理画面で設定した内容を漏れなくアプリに伝えるためのファイルです。Firebaseプロジェクトごとに1つのファイルとして提供されていて、アプリに組み込むことでデータの送信先の設定が完了します。
【補足】
1つのアプリの計測データを複数のGA4で収集することはできませんが、複数のGA4で参照することは可能です。
例えば、Google アナリティクスの有料版(GA360)ではサブプロパティの作成ができるため、下記のようにGA4で計測したデータのうち、アプリデータだけをサブプロパティで確認することができます。
POINT②の「1つのアプリを複数のGA4で計測できない」仕様を踏まえ、いざFirebaseプロジェクトとGA4を連携してみたものの、連携するGA4を変更する必要が出てきたため、連携解除を検討したいというご相談はよくいただきます。
連携解除自体は可能ですが、解除した場合は下記のようなデータ状況になるため、対応時は注意が必要です。
項目 | Firebaseコンソール | GA4 |
連携解除中のアプリデータ計測 | 計測不可 | 計測不可 |
過去データの閲覧 | 閲覧不可 | 閲覧可能 |
アナリティクス関連の設定の閲覧 | 閲覧不可 | 閲覧・編集が可能 |
こういったデータ状況になるのは、FirebaseプロジェクトとGA4を連携している場合のアナリティクスデータが、Firebase プロジェクト内ではなく、GA4のプロパティ内にあることが関係しています。
連携を解除すると、Firebaseはアナリティクスデータにアクセスできなくなり、Firebase コンソールには空のアナリティクスダッシュボードが表示されます。
連携解除前に計測した過去データと、連携解除して別のGA4と連携後に計測するデータは、以下のような状態になります。
こういった状態を避けるためにも、連携作業をする前に、どのFirebaseプロジェクトとどのGA4を連携するのかを慎重に判断することが重要です。
「アプリのユーザーは、どのようにユーザーを識別していますか?またそのユーザーが別のユーザーとして計測されることはありますか?」というのもお客様からよくいただくご質問の1つですが、GA4のアプリユーザーは、何も設定をしなければアプリインスタンスIDベースでユーザー識別されます(BigQueryではuser_pseudo_idのフィールドに格納される値です)。
アプリインスタンスIDはアプリの領域内に保存されているIDで、端末に入っている1つのアプリあたり1つ(厳密にはアプリインスタンスあたり1つ)生成されますが、ユーザー側の行動等によってこのIDが変更される場合があります。
例えば下記のようなケースが該当します(公式のヘルプページでは明記されていないケースもありますが、弊社の検証でアプリインスタンスIDが変更されることを確認しています)。
上記のいずれかの条件に該当した場合、ユーザーIDで各ユーザーに一意の値を割り当てていない限りは、同一人物でもGA4上は別ユーザーとして識別されますので、ご留意ください。
※ Firebaseで用意されているリセットするメソッドは、以下のヘルプページで公開されています。
【iOSはこちら】resetAnalyticsData()
https://firebase.google.com/docs/reference/swift/firebaseanalytics/api/reference/Classes/Analytics#resetanalyticsdata
【Androidはこちら】resetAnalyticsData
https://firebase.google.com/docs/reference/android/com/google/firebase/analytics/FirebaseAnalytics#resetAnalyticsData()
ウェブではサードパーティCookieの規制が進み、ユーザー属性データの取得が難しくなっていることは度々話題になっていますが、アプリのユーザー属性が何をもとに取得されているか、ご存知でしょうか?
実はアプリのユーザー属性(年齢、性別、興味関心など)は、「広告識別子」というデバイスに割り当てられた一意のIDの取得可否に大きく依存しています。
iOSでは「IDFA」、Androidでは「広告ID」と呼ばれ、これらはユーザーの行動データと属性情報を紐づけるために利用されます。
近年、ウェブだけでなくアプリのプライバシー保護の意識も高まり、広告識別子の取得に関する規制が強化されています。特にAppleは、アプリがIDFAを取得する際に、ユーザーに明示的な同意を求める「App Tracking Transparency(ATT)」フレームワークを導入しました。この同意が得られない場合、広告識別子を取得できなくなるため、GA4はデバイスレベルでユーザーを特定し、属性データを紐づけることが困難になります。結果として、ユーザー属性データが大幅に欠損したり、精度が低下したりするケースが見られます。
GA4で確認できるアプリのユーザー属性は、アプリを利用するすべてのユーザーのデータが反映されていない可能性が高いことを考慮し、分析する必要があります。
「アプリデータの正しい見方がわからない」「なぜかウェブとデータが合わない」といった、これまで抱えていたモヤモヤは少しでも解消されましたか?GA4のアプリ計測は、まさにドキュメントだけでは把握しきれない「仕様の壁」が存在します。本記事が、その壁を乗り越えるための足がかりとなれば幸いです。
GA4でのアプリ計測について、より詳しく知りたい、あるいは自社の状況に合わせた具体的なアドバイスが必要な場合は、ぜひお気軽にお問い合わせください。経験豊富なプロフェッショナルが、お客様の課題解決をサポートいたします。
本動画では、イー・エージェンシーから「Google マーケティング プラットフォーム(GMP)」をご契約された際の「付帯サービス」や「具体的な成功事例」について、動画でわかりやすくご紹介します。
「 Google アナリティクスの無料版と有料版の違い」や「そもそもGoogle マーケティング プラットフォーム(GMP)とは何か?」など、GMPツールについてもご紹介しています。
イー・エージェンシーは、「Google マーケティング プラットフォーム(GMP)」の認定セールスパートナー、「Google クラウド プラットフォーム(GCP)」の認定パートナーです。
また弊社はGoogleより2021年上半期における Google アナリティクス 4 プロパティ(GA4)の数多くの導入支援実績を評価され、認定セールスパートナーとしてアワードを受賞しております。
これまでの豊富な実績を元に、GA4導入・移行をお客様のビジネスに寄り添い支援させていただきます。
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