自社アプリの WebView(アプリ内ブラウザ)からのアクセスを、通常のウェブアクセスと区別できず、正確なユーザー行動分析を諦めていませんか?
アプリ内でウェブコンテンツを表示する「WebView」は、ユーザー体験を向上させる一方で、Google アナリティクス 4 プロパティ(以下、GA4)のデータ計測においては、アクセス元が分かりづらくなるという問題があります。WebViewからのアクセスは、アプリ内でのユーザー行動の一部と考えるのが一般的ですが、WebViewのデータは通常のウェブブラウザ(ChromeやSafariなど)と同様にウェブデータとして計測される仕様です。
また、デフォルトでは自社アプリのWebViewからのアクセスなのか、他のアプリのWebViewから閲覧しているのかの判別が難しく、「WebView」のユーザー行動の分析に頭を悩ませる方も多いのではないでしょうか。
本記事では、アプリ内のWebView利用状況を、通常のウェブ利用と明確に分けて把握できる環境を構築することを目的とし、3つのポイントにまとめてご紹介します。
ユーザーが、自社アプリやSNSのアプリ等を起動した後、WebViewに遷移した場合、GA4のデフォルトでは「ウェブデータ」として計測されます。
そのため、ユーザーがアプリ(ネイティブ)とWebView間を行き来すると、アプリ部分は「アプリインスタンスID」、WebView部分は「クライアントID」でユーザーが識別されます。結果として、GA4では異なるユーザー・異なるセッションとして計測されます(※)。
こういったプラットフォームを跨ぐ遷移を同一ユーザー・同一セッションで計測するためには、こちらの記事で紹介したような実装が必要です。
ですが今回は、上記のような実装を行わないデフォルトの状態で、WebViewのアクセスを通常のウェブブラウザからのアクセスと区別して分析するための環境構築を考えていきます。
まずは、このウェブデータとして混在しているWebViewアクセスの中から「ブラウザ」ディメンションを利用して、どの程度の識別が可能かを次の章で詳しく見ていきましょう。
※…同じ端末の同じアプリ内のWebViewであれば、何度WebViewを起動し直しても、クライアントIDは維持され、同一ユーザーとして計測され続けます。
WebViewがウェブデータとして計測されている場合、ウェブのデータストリームではウェブブラウザで閲覧したデータとWebViewで閲覧したデータが混在する状態になります。
混在したデータの中で、WebViewで閲覧されたかどうかを判別するには「ブラウザ」のディメンションを利用することが有効ですが、WebViewの実装方法によっては通常のブラウザで閲覧されたウェブデータと区別ができる場合とできない場合があります。
<区別できるケース>
アプリのWebView実装で、Androidの「Android Webview」、iOSの「WKWebView」を利用している場合は、GA4の「ブラウザ」ディメンションを利用してWebView閲覧データを判別できます。
| WebViewの実装 | GA4上の「ブラウザ」ディメンションの表示 |
| Android Webview(Android) |
Android Webview |
| WKWebView(iOS) | Safari(in-app) |
※ウェブブラウザで閲覧した場合、「ブラウザ」ディメンションでは「Chrome」や「Safari」などの値が計測されますので、値を見るだけでWebViewデータかどうかがわかります。
<区別できないケース>
Androidの「Chrome Custom Tabs」、iOSの「SFSafariViewController」を利用してWebViewを実装している場合は、GA4上でウェブブラウザのデータと区別することができません。
GA4の「ブラウザ」ディメンションでは「Chrome」や「Safari」の値が計測されます(弊社検証で確認した情報)。
WebViewの識別ができたら、次は「どのアプリ内での閲覧か」を特定することが重要です。自社アプリと外部アプリを区別する方法は、以下の通りです。
| 項目 | メリット | デメリット |
| 方法1 | 設定箇所が少ないため、設定は比較的簡単です。 | すべての画面で同じ値が計測されるため、ネイティブのどの画面からの遷移かは判別できません。 |
| 方法2 | utmパラメータに設定する値を調整すれば、ネイティブのどの画面から遷移したかを判別できます。 | ネイティブから遷移するリンクが複数あった場合、すべてのリンクに設定が必要となります。 |
対応方法の詳細は以下の通りです。
<方法1>
※Google タグ マネージャー(以下、GTM)をご利用の場合の対応方法となります。
▼登録例
レポートの見方
ここまでの実装が完了すると、自社アプリのWebViewのアクセスが作成したカスタムディメンションで「true」と表示され、GA4上でウェブブラウザのデータと区別して分析することが可能になります。
例えば[ページとスクリーン]レポートでこのカスタムディメンションをセカンダリディメンションに適用すると、WebViewで閲覧されたページでは「true」、ウェブブラウザで閲覧されたページでは「false」が表示され、ブラウザとWebViewがどの程度の割合で閲覧されたのかが確認できます。
▼レポートイメージ
<方法2>
自社アプリのネイティブからWebViewへ遷移するリンクにutmパラメータを追加すると、設定した値がセッションの参照元/メディアとして計測されるため、自社アプリのWebViewからのアクセスを明確に把握することができます。
▼計測したい参照元/メディア
「app/webview_link」
▼計測したいキャンペーン
「fromApp」
▼utmパラメータ設定例https://www.e-agency.co.jp/?utm_source=app&utm_medium=webview_link&utm_campaign=fromApp
※utmパラメータは、外部トラフィックの計測を目的として設計されています。
今回のようにネイティブアプリからWebViewへの遷移など、技術的な要件がある場合を除き、サイト内を遷移するリンクにutmパラメータを付与することは極力避けるようお願いいたします。
レポートの見方
この実装が完了すると、自社アプリからWebViewに遷移したデータのセッションの参照元/メディアが「app/webview_link」、セッションのキャンペーンが「fromApp」で計測されます。
例えば[トラフィック獲得]レポートでセッションの参照元メディアとセッションのキャンペーンを確認すると、utmパラメータで設定した値でどの程度流入したのかを確認できます。
いかがでしたか?
多くのGA4ユーザーが直面するウェブブラウザのデータにWebViewデータが埋もれてしまう問題の本質と、デフォルト設定で判別できるケース、そしてさらに詳細な情報(どのアプリからの閲覧か)を特定するための具体的なステップについてご紹介してきました。
「ブラウザ」ディメンションの確認から、GTMでのユーザーエージェントを活用したカスタムディメンションの設定まで、少し専門的な内容も含まれていましたが、これらの実装はアプリとウェブを連携させた分析を行う上で不可欠な要素です。ぜひご自身のGA4データと向き合い、本記事の内容を応用して、より深いユーザー行動の分析に役立ててください。
複雑な設定や高度な分析については、アプリとWebViewの計測・分析に豊富な経験を持つイー・エージェンシーがサポートいたします。
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