※ 今回のインタビューは、株式会社サイバーエージェント様のご協力の下、緊急事態宣言・まん延防止等重点措置の期間外に、新型コロナウイルス感染予防対策ガイドラインに準拠して実施致しました。マスク不着用の写真は飛沫や呼気等に十分注意して撮影しております。
株式会社AbemaTV
開発本部 Abema Data Center データアナリストチーム
マネージャー 中村 晃様
株式会社サイバーエージェント
グループIT推進本部 Data Management Center Data Analysis Consulting Team
アナリティクスコンサルタント 須磨 守一様
GA4への移行に向けてどのようなご準備をされ、取り組まれたのでしょうか?
移行に向けて既存の計測要件を整理する中で、活用ニーズが顕在化
中村様:私はサイバーエージェントが運営するABEMAという動画サービスにおいて、データアナリストチームのマネージャーを担当しております。
ABEMAはテレビ、スマホアプリ、Webブラウザなど複数のデバイスにサービスを提供している点が特徴です。各デバイス特有の画面や機能があるため、計測イベント、パラメータの名前や値、計測設定の有無に軽微な相違がありました。GA4ではデバイス毎にプロパティを分けずにサービス全体を1つのプロパティにまとめる指針を取ったため、移行に向けて、これらの整理をすることから始めました。
GAの全ての機能を使おうとするのではなく、自社の業務に合わせた最適な使い方をイメージして準備を進めていきました。
ABEMAには色々な部署があり、番組制作からマーケティング、開発など、様々な目的でGAを使っています。各部署のGA利用者からどのような機能ニーズ(分析、レポート)があるかをヒアリングし、レポートの閲覧頻度や使われていないレポートがないかなどを洗い出し、GA4でどのように実現するのかを設計していきました。
このような過程の中で、GAとGoogle広告の連携強化というニーズが顕在化してきた経緯があります。
須磨様:私は事業部所属ではなく、主にメディア部門の事業部やグループ会社に対してデータの利活用を推進する横軸の組織に所属しているアナリティクスコンサルという立場です。具体的なサービス名を挙げますと、競輪・オートレースの投票サービス「WINTICKET」、株式会社CyberFightが運営するプロレス動画配信サービス「WRESTLE UNIVERSE」などを私が直接担当しています。
サービスによってデータ基盤や分析要件など様々なのですが、ABEMAのようないわゆるハイエンドな要件を持っている部署もあれば、収益レポートや集客レポートがあれば充分といったローエンドの要件の部署もあり、分析要件の規模は大小様々です。ローエンド・ハイエンドどちらのニーズも満たし、価格や機能などあらゆる点において優れていたため、GA4以外に選択肢がなかったと感じています。
(向かって左側)株式会社サイバーエージェント 須磨 守一様
(向かって右側)株式会社AbemaTV 中村 晃様
移行の背景やGA4のメリットも伝えたことで、皆の理解を得て進むことができた
須磨様:つい先日、移行にあたっての共有会を開いたばかりなんですよ。
各事業部にも、「GA4という新しいGAが登場して、ユニバーサルアナリティクス (以下UA)が終了するらしい」という情報は伝わっているのですが、実際には「具体的に何が変わるのかよくわかっていない」、「移行にあたって何をするべきなのか、どれくらいの工数が必要なのか見当がつかない」という反応でした。
移行のタイムリミットに間に合うよう、単にスケジュールだけでなく、なぜ移行しなくてはいけないのかといった背景や、GA4の新機能やメリットをお話しした上で、「事業部側でリソースを割いてください」と説明をして回りました。ツールの変更には大きな変化を伴いますし、それなりの工数を割く必要があるので、優先度を上げてもらう必要がありました。
約20の事業部毎に共有会を行ったので大変でしたが、そのおかげで、皆さんが納得した上で移行に向けて動き始めています。
中村様:ABEMAのGA利用現場では「GA4になっても今までと同じことが実現できるように提供してほしい」という依頼が多く、そこを調整していく必要がありました。変化に対する抵抗の方が大きかったのは事実ですね。
そこで、GA4も「GA」という同じ名前が付いていますが、UAとGA4は異なる分析ツールであり、「こういうところが変わる」ですとか、「こういうところは残るけれど、なくなってしまうレポート、機能もある」、というように新しいツールへ切り替わっていく背景も丁寧に説明することで、理解を得てきました。
これまでに行っていたレポート業務がツールの変更によっても問題なく行えるよう、特に意識をして移行しています。
UAとGA4のデータ差異について
イー・エージェンシー:UAとGA4ではデータに差異が発生する場合もありますが、各部署の方にはどのようにご説明いただいたのでしょうか?
中村様:UAとGA4は「違うツールだから」と説明した上で、データ差異の数値を合わせることをゴールにしませんでした。世の中全体でプライバシーに対する考え方が変わってきているため、これまで計測できていた情報がすべて取れるわけでもなくなってきています。GA4で取れている情報には価値があると思っておりますので、あるタイミングからは「新しいGA4のレポートを使ってください」という説明をして、移行がギリギリにならないよう心がけていました。
GA4導入を弊社サポートなどご活用いただきながら進めていただいた中で、イー・エージェンシーのサービスはいかがでしたか?
中村様:ABEMAで移行を開始した当初は、GA4の情報がまだ少ない時期でした。
機能面では、サービス毎に必要な機能の洗い出しを行い、GA4でもUAと同様の機能が提供されるかどうかを確認し、計測実装面では、自社のエンジニアと私自身で調査をしながら、イー・エージェンシーさんに定期的に確認を行いました。
イー・エージェンシーさんはGoogle社が準備したドキュメント、サポートからの回答をそのまま提示するだけではなく、事前に動作確認を行ってから回答いただけるので、手戻りが少ない印象です。
GA4は変化の早いプロダクトでドキュメント上の記載と実際の動き方が異なる場合もありますので、適切なフィードバックをいただけたのはありがたかったです。
また、難易度が高い課題に対しても諦めずに取り組んでいただける点も信頼できました。
須磨様:イー・エージェンシーさんは、トラブルシューティング能力の高さに加えてとにかくレスポンスが早いです。ログ実装や設定作業などは開発プロセスにおいてリリース直前でスケジュール的にもかなりタイトなことが多い中、そういったレスポンスの速さというのは非常に助かっています。
少人数で回しているチームなので、多くの事業部から問い合わせが集中するとどうしてもボトルネックになってしまいがちなのですが、分析要件の実現やデータの質を担保する上で、私たちにとってイー・エージェンシーさんは必要不可欠なビジネスパートナーです。
GA4導入後、実際にGA4を触ってみて、ご感想や良かったポイントなどをお聞かせください。
中村様:社内でGAに最も携わっている私でさえ、UAとGA4は「全く違う世界」にいるかのようなツールだと感じましたね。
私が管理者として一番びっくりし困った事は、GA4の管理画面で色々なことができてしまう点です。
UAではGoogle タグ マネージャー(以下GTM)を使う必要があった設定でも、GA4であればGTMなしで設定できる場合があります。
運用しやすい反面、誰でも設定を変更できてしまう危うさもあるため、権限と役割をしっかり管理した運用ルールを定めていく必要があると考えています。UAにもありましたが、数年後に「この設定の目的はなんだろう?」と思うことがよくありますので、目的と設定内容を設計書にしっかり記載しておく必要があります。後でだれが見てもわかるようにするためです。
また、GAのスマホアプリがGA4も対応している事が嬉しいですね。
サービスの運営にとって、急激なトラフィックの変化がリアルタイムに見られるのはとても重要です。社内でも多くの人がGAのスマホアプリでトラフィックレポートを見ています。
UAでもGoogle広告との連携は行っておりましたが、Google広告で活用できる、GA4の「オーディエンストリガーイベント」や「予測オーディエンス」はパワフルな新しい機能だと思います。早速活用し、既に良い結果が出てきています。引き続き機能が拡張されていくよう、期待しています。
須磨様:2019年頃のGA4発表当時は、「発表で語られていることが実現されるのは、だいぶ先だろうな」と感じていました。
つい数ヶ月前まではGA4の機能が足りておらず、UAで設定していた計測ができなくなる不安があったのですが、最近ではGA4にも必要な機能が揃ってきたため、不安のほとんどが解消されつつあります。
須磨様:移行を進める中で、実装や設定ミス、または仕様の違いによる既存データの乖離が頻繁に発生し、ユーザー数が合わない、PV数がずれるなどのトラブルシューティングが大変でしたが、イー・エージェンシーさんのサポートに助けられました(笑)
幸いにもUAとGA4のデュアルタギングを行っているため、こうしたデータの乖離にいち早く気付くことができましたが、全くの新規でGA4だけを導入していた場合は気付かなったかもしれませんね。
あとは、BigQueryのエクスポートに最大24時間が掛かる点が懸念です。
中村様:遅くなりましたよね。BigQueryに限らず、全体的にレポートが表示されるまでに時間が掛かる点が気になっています。GAのリアルタイム性を評価しているので、改善されるといいなと思います。
イー・エージェンシー:同様のご意見を他のお客様からも頂いているので、Google社にフィードバックして改善に繋げてまいります。
GA4の新機能をご利用されていかがでしたか。
中村様:GA4の目玉機能となっている「予測オーディエンス」、「オーディエンストリガーイベント」をGoogle広告に活用する施策を真っ先に行いました。Google広告とGA4を連携することで、エンジニアやデータサイエンティストのリソースを使わずに、描いたマーケティングプランを自身で実現できる。そんな世界に飛び込むことができました。
Google広告の運用担当者もGA4のデータを活用したいというニーズが今まで以上に強くなり、「どのようなイベント、プロパティを計測していて、どのように広告に役立てるのか」を一緒に考える機会が増えた事が良かったと思っています。
GA4の新機能をご利用されて新たな気づきや変化がありましたら、教えてください。
中村様:GA4とGoogle広告を連携すると、直ぐに予測オーディエンスをGoogle広告で活用できますが、成果を出すためには、広告や分析、UX、プライバシーポリシーへの配慮など多岐に渡ったマーケティング活動に精通している人材が必要になってきていると感じています。広告だけ、アクセス解析だけ、など専門分野が限定されていると、マーケティング活動としてGA4のデータを使って何ができるのかイメージが湧かないと思います。
弊社のGMP プレミアムサロン(Google アナリティクス 360 ご契約社様限定のデータ活用支援情報サイト)をご活用いただいていらっしゃいますでしょうか。
中村様:イー・エージェンシーさんのサービスの中で「プレミアムレター」*は毎月の楽しみなコンテンツの一つになっています。GA関係者同士の議論の活性化にも繋がっています。
また、GAの新しい情報を社内に周知する際にも「プレミアムレター」を活用させていただいています。
GA担当者の記事への反応を見ていると面白いです。GA4に直帰率が出てきた際は特に反応が大きく、皆が切望していたことを実感しました。
GA4移行のために各部署を説得していく際の資料は、「GMP プレミアムサロン」のコンテンツや「プレミアムレター」を参考にしています。GA4への移行は大人数に納得してもらうためにも分かりやすい説明や資料が必要でしたから、すごく役立ちましたね。
須磨様:「GMP プレミアムサロン」は、GA4が出る前はたまに見る程度でしたが、GA4が登場して見始めたら大変内容が濃いことに気付きました。GA4の公式ドキュメントに掲載されていないような仕様の詳細や設定方法など、丁寧に説明されているので本当に助かっています。移行に向けたキックオフや、各事業部向けの説明資料を作成する際にとても役立ちました。
個別のテーマ毎にコンテンツがまとまっているので、使い方の説明をする際に「ここを見ておいて」で完結するのはとても魅力的です。
*「プレミアムレター」……イー・エージェンシーがGoogle アナリティクス 360 ご契約のお客様のみにご提供しているコンテンツ。GMP製品の最新情報などが掲載され、原則として月に1回発行している。
これからこんなコンテンツがあったら活用してみたい、といったご意見ありましたら、ぜひお聞かせください。
中村様:今後は、GA4を使った分析例を紹介したコンテンツに期待したいですね。例えば、「マルチデバイスを横断したユーザースコープ集計に特化した行動分析例」、ですとか。機能の説明だけでなく、「統計的手法を利用したレポートでこういうことができるようになった」という分析事例があったらいいですね。
須磨様:まさに「GMP プレミアムサロン」のコンテンツが拡充されている最中だと思いますが、これからも「かゆいところに手が届くコンテンツ」をどんどん増やしていただけると非常に助かります。
これからGA4を導入される方々に向けてのメッセージ、アドバイスなどがありましたら、お願いいたします。
中村様:Google社のプロダクトは、1つずつ使っていくよりも複数プロダクトの連携によって大きな力を発揮すると思っています。部分的にユーザーを理解するのではなく、プロダクトを繋げてマーケティング活動をしていくと、色々なチャレンジができるのではないでしょうか。
是非この機会にGA4を導入して、プライバシーを考慮した上で関連プロダクトとデータを連携することで新しい発見があると思います。
須磨様:データ分析の理想的な環境は、分析やレポート要件、ログ仕様書などがきちんと整理され、最新状態を維持している状態だと思いますが、実際には理想に追いつかない場合も少なくないですよね。
今回の移行を既存の計測要件を見直す良い機会ととらえて、データ収集上の負の遺産を解消したり、普段だったらわざわざテーブルに載せて話さないような、分析要件を改めて議論するといった機会を持つことをおすすめします。UAでの既存の要件や設計をそのまま「お引越し」するのはもったいないのではないかと思います。
最後に、今後イー・エージェンシーに期待をされることをお聞かせください。
中村様:GAは、マーケティングに携わっている方であれば何らかの形で利用したことがあると言ってもいいくらいメジャーなアクセス解析ツールです。UAは長い年月を経て、「誰でも使える便利なツール」というポジションを獲得しました。イー・エージェンシーさんには、新しいGA4も皆が使っている便利なツールになれるよう、マーケティング界隈に浸透していく手助けをしていっていただきたいですね。
須磨様:GA4を含めてGoogle マーケティングプラットフォーム(以下GMP)製品は様々な要件に応えてくれる素晴らしいツールだと感じているものの、公式のドキュメントを読んだだけでは分かりづらい部分もあると感じています。
イー・エージェンシーさんは、そうした製品とエンドユーザーの間にある溝を埋めて、双方をつないでくれるビジネスパートナーですね。引き続きこの溝を埋めていただけると嬉しいです。
また、今後は広告運用やデータ活用におけるコンサルティングにも期待します。
「〇〇という課題に対してこういう機能を使えばこういうデータ活用が可能です」といった実践的なご提案をぜひいただきたいですね。
中村様:イー・エージェンシーさんは難しくて曖昧な問い合わせから逃げず、解決してくれるので、誠実さを感じます。時には設計した通りに進まないこともあるのですが、放り出さないで最後までお付き合いいただけることに感謝しています。
イー・エージェンシー:ありがとうございます。機能はもちろん重要ですが、あくまでもビジネスの課題を解決したり成果を上げていくための手段なので、「具体的な解決策としてこの機能があります」とご案内できるよう心がけ、今後もサポートを努めてまいります。
貴重なご意見をいただき、誠にありがとうございました。今後も引き続きデータ活用の推進パートナーとして伴走し、課題の解決に向けてお役に立てたらと考えております。これからも引き続きよろしくお願いいたします。
株式会社AbemaTV 中村 晃様(ロゴ右の外側)
株式会社サイバーエージェント 須磨 守一様(ロゴ右の内側)
株式会社イー・エージェンシー 田中 亨(ロゴ左の内側)、石井 暢秋(ロゴ左の外側)
今回はサイバーエージェント様に、同社でGA4を導入された経緯や、今後のご活用に関する展望などについてお話を伺いました。
イー・エージェンシーは、Google アナリティクス 360の導入・運用およびデータ活用において、APACでもトップクラスの実績を持つGoogle公認リセラーです。これまで培ってきた豊富な知見をもとに、Google アナリティクス 4 プロパティ(GA4)の導入・運用や、Google Cloud(Google Cloud Platform/GCP)によるデータ統合、広告連携、アトリビューション分析、広告やメールなど顧客へのアプローチ施策の効果改善など、データ活用全般を支援いたします。