GA4への移行をきっかけに、データ計測要件の統一に踏み切った株式会社集英社メディアビジネス部。20のWebメディアを横断する大規模な取り組みは、集計コストの削減にとどまらず、広告パフォーマンスの可視化や社内コミュニケーションの活性化といった副次的な成果も生み出しました。本記事では、GA4移行の舞台裏から、広告収益最大化を見据えたダッシュボード構築、そしてデータがもたらした組織変化までを、同部 デジタルプロデュース課の稲澤様に伺います。
株式会社集英社
メディアビジネス部 デジタルプロデュース課
課長代理
稲澤 真利 様
稲澤様:「メディアビジネス部」は、かつては「広告部」と呼ばれていた部署で、集英社の出版物やメディアを活用して収益を上げることをミッションとしています。単に広告枠を売るだけでなく、IP(知的財産)の利活用やタイアップ記事の制作など、多様なビジネスを展開してきました。
メディアビジネス部には営業メンバーが所属する「ビジネスプロデュース課」を中心にいくつかの課があり、私の所属する「デジタルプロデュース課」は取材誌のWebサイトや漫画アプリなど、デジタルメディア上に掲載される広告を担当する部署となります。
稲澤様:GA4移行当時はまだメディアビジネス部(広告部)の管轄ではなく、デジタルソリューション部が社内の各部署と連携しながらGA4への移行を実施しています。かつてのメディア運営の現場では、各編集部や事業部が個別にWebサイト(媒体)を運用・計測しており、全社横断的なデータ収集ができていませんでした。媒体ごとに開発会社も計測要件も異なっており、横断的な分析が不可能だったのです。そのため、広告主様へのレポート制作において、媒体ごとに異なる集計方法への対応が求められ、作業コストが非常に大きくなってしまう課題がありました。
そうした中、2022年4月にユニバーサルアナリティクス(以下、UA)からGoogle アナリティクス 4 プロパティ(以下、GA4)へのアップデートがあり、このタイミングで媒体横断の計測要件を統一して課題を解決しようということになりました。
稲澤様:このプロジェクトは、20におよぶ媒体の計測基本要件を統一するという大規模なものです。また、タイアップを受注した場合、広告主から対価を得てレポートを提出するビジネスである以上、数値の間違いは許されません。自分たちで抱え込まず、その道のプロフェッショナルに伴走していただく必要があると考えました。
パートナーにイー・エージェンシーを選んだのは、以前、ある媒体のリニューアルにご協力いただき、単なるツール導入だけでなく、我々の展開するメディア事業への深い理解のもとで「KPIをどう設定すべきか」という戦略の部分から議論できた実績があったためです。この時のやり取りが関係者の間で高く評価されており、GA4移行においてもイー・エージェンシーにお願いしようということになりました。
稲澤様:数値の取り方が統一されたことで、計測要件の統一による集計コスト削減という当初のゴールを達成することができました。しかし、データは「計測・集計」をして終わりではなく、その先の「可視化・分析」を行い、事業改善に結びつけなければ意味がありません。そこで、次のステップとして、その大量のデータを横断的に可視化・分析するBIを構築しましたが、広告パフォーマンス最大化に向けたインサイト(気付き)を得るために、タイアップ案件に特化したダッシュボードを作ることにしました。
稲澤様:現在のメディアビジネス部は、GA4への移行が完了してから約1年半後となる2024年7月に組織改編があり、デジタルソリューション部マーケティング室のメンバーがこの部署に合流しました。先ほどもお話ししたように、この部署は自社メディアを利用して収益を上げることをミッションとしています。そのため、サイト全体のPVを見るだけでなく、タイアップ広告のパフォーマンスを分析し、収益を最大化させることが新たな重要課題となりました。
稲澤様:その通りです。とは言え、当時はまだGA4を使いこなせる社員がそう多くありませんでした。導入後、イー・エージェンシーの協力も得て社内で勉強会などを開催しましたが、専門家でない社員がGA4を直接操作して深い分析を行えるようにする学習コストは高く、しかも属人化してしまいがちです。また、広告特有のニーズとして掲載期間に絞ったデータ抽出をしたい、ある記事から別の記事へ回遊をうながせているかを可視化したいというものがあり、これがGA4画面上のレポートでは出しにくい問題もありました。
そこで、期間指定や回遊分析などの高度な分析要件を満たしつつ、まずはマーケチームが状況を把握できる環境を作るため、Google Cloud(BigQuery)およびLooker Studioを活用した広告特化型ダッシュボードを構築することになったのです。
稲澤様:イー・エージェンシーとは、GA4移行後もそのサポートなどでずっとお付き合いが続いていましたし、何より、ダッシュボードの元になる計測要件を一緒に作ってきたことで「前提」を共有できていたことが大きかったですね。新しいダッシュボードを構築するにあたり「この数字はもう取れていますよ」「これは追加実装が必要ですね」といったコミュニケーションがとにかく早い。仮に他社にお願いしていた場合、前提の共有から始めなければならず、時間もコストも比べものにならないほどかかっていたはずです。
稲澤様:ダッシュボードの構築はGA4のデータをLooker Studioに接続すれば完了という簡単なものではありません。対象となる媒体数も多く、そこに蓄積された膨大なデータをBigQueryに流しこみ、可視化に必要な形に加工・成形する工程を作り込むのにとても苦労しました。なお、分析にはGA4のデータ以外にも、広告の管理情報など異なるデータソースを組み合わせる必要があり、その連携も難度の高いところでした。そのほか、ダッシュボードそのものではありませんが、媒体横断での流入分析を可能にするため、各媒体でのUTMパラメータ(流入元計測用のタグ)の付与ルールがバラバラにならないよう管理・統一するルール作りも行っています。
稲澤様:完成が近づき解像度が上がっていく中で、新しい要望や改善点が見えてきたりします。そこで、まずは当初予定していたものをフェーズ1として、その後、追加要件を満たしたものをフェーズ2として段階的に開発を進めています。フェーズ2が完成したのが2025年夏だったので、実に1年がかりのプロジェクトとなってしまいました。
稲澤様:新しいダッシュボードでは、PVなどの基本的な情報に加え、サイト内での「誘導効率」を媒体横断で比較できるようになりました。これにより、誘導効率が良い媒体の成功要因を分析し、他の媒体へ横展開する体制が整いつつあります。
また、単にデータが見える化されただけでなく、マーケティングチームが主体となって横断的な分析を行い、傾向を把握できるようになったことも大きな成果の1つと言えるでしょう。現在、マーケティングチームではダッシュボードをベースに定期的な打ち合わせを行っています。担当媒体ごとに「今月はこの媒体がこうした動きをした」といった全体の傾向を確認し、数字に大きな変化や気になるゆらぎがあった場合に、さらにGA4本体で詳細を深掘りするという分析フローが確立しました。
稲澤様:まず、マーケティングチームとしては、タイアップ記事の数字分析が容易になりました。横断的に数字が見られることで案件の比較もやりやすくなったと思います。横断的なデータを確認できるようになったことを受けて、「なぜこのような数字になったのか?」「今後改善できることはあるのか?」といった相談が日常的に寄せられるようになっています。こうしたやり取りを経て、営業担当者がクライアントに対してデータに基づいた背景説明や改善提案を行えるようになったことは、営業活動の質向上にも繋がっているようです。
また、編集部へも客観的な数値に基づくフィードバックや、社内の他媒体のパフォーマンスを的確に共有できるようになったことで、数字を見てPDCAを回す意識が高まっているのを感じています。
稲澤様:数字を見ながら改善する、というのがすべての基本だと思いますが、逆に「単にPVを追うだけ」ではない、メディアとしてのあり方を再認識する機会にもなっています。例えば、読者が記事で紹介された商品に興味を持ち、記事上のリンクから商品サイトへ移動した場合、媒体側としては「離脱」されたことになります。一般的に離脱はネガティブな行動と評価されますが、一方でそれは読者に興味のある情報を提供して、読者の商品を探す行動に寄与できた結果だとポジティブに考えることもできますよね。GA4移行後は、こうしたメディアビジネス独自のKPIやコンバージョンのあり方を模索し始めています。
稲澤様:単にPV数を稼ぐだけなら、生成AIを駆使して検索ボリュームの大きなキーワードで記事を量産するというやり方もあるかもしれません。しかし、私たちはメディアとしての本質的な価値提供にこそ向き合っていかねばなりません。メディアとして「伝えたいこと」を守り、いわゆる表示回数やユーザー数以外に、別の価値があることの証明にデータを使えないかを考えています。
「PVは少ないが滞在時間やエンゲージメントは高い記事」や「特定の層に刺さった記事」「特にリピーターに好まれている記事」など、数字の大小だけではない記事の質やブランド価値を評価軸に加えた議論を進めていきたいですね。もちろん、そのためには今後もダッシュボードの改良をはじめとしたデータ分析の改善を継続していく必要があります。ぜひ、今後もイー・エージェンシーのお力をお借りできればと思っています。
稲澤様:自分自身、GA4の進化に日々対峙し、その可能性を模索している最中ではあるのですが、GA4を使いこなすには、座学だけしていても意味がないなと思います。これは気になる、と思うことに対してデータを自分で見てみる、ということがなにより大切です。最初は慣れずに本当に苦労したのですが、とにかく手を動かすことをやめなければ、徐々にわかってくるようになるものだな、と今は思います。
そして、その上で、自分たちだけで解決しようとしないことが大切です。間違った見方をしたまま満足しないよう、イー・エージェンシーのような、専門知識を備えたプロフェッショナルにサポートしてもらうのが結果としては一番の近道になると思います。
イー・エージェンシーは、これまで培ってきた豊富な知見をもとに、Google アナリティクス 4 プロパティ(GA4)の導入・運用や、Google Cloudによるデータ統合、広告連携、アトリビューション分析、広告やメールなど顧客へのアプローチ施策の効果改善など、データ活用全般を支援しております。
まずは、お気軽にサービス資料請求、またはお問い合わせください。
みなさまのデータ活用をご支援させていただきます。