前回の記事では、アプリのネイティブとWebView間の遷移を一貫して同一ユーザー・同一セッションで計測する方法について解説しました。連載最終回の本記事では、Firebaseで計測したアプリデータをBigQueryで分析するメリットについてご説明します。
このシリーズでは、 Firebaseで計測を始める具体的な手順 や 参照元計測の強化方法、 WebView計測の注意点 など、実践的な内容をお届けします。Firebaseを使いこなして、データ分析をさらに進化させましょう!
※本記事の情報は2025年2月時点のものです。
最新の情報につきましては、お気軽にイー・エージェンシーまでお問い合わせください。
Firebaseでアプリ計測を行う場合、Google アナリティクス 4 プロパティ(以下、GA4プロパティ)とFirebaseを連携する必要があり、計測されたアプリデータはFirebaseの管理画面上と、GA4プロパティの両方で確認することが可能です。
分析を行う際は、データ分析に特化したレポートや機能を多く備えているGA4プロパティ側での分析がお勧めです。しかしGA4プロパティには仕様上の制限があり、抽出・分析できるデータには限界があります。次の章では、GA4の制限について見ていきましょう。
GA4プロパティを利用する場合、データの保持期間やデータの種類・量に関する制限が存在するため、実現したい分析ができるとは限りません。
例えば、GA4は集計済みのテーブルまたは未集計のテーブルからデータを取得しますが、未集計のテーブルのデータはアナリティクスのサーバーに保持できる期間が決められており、その期間を過ぎると削除されてしまいます。
また、GA4では値の種類が多いカスタムディメンションを計測した場合、データが「(other)」という行にまとめて表示されてしまったり、レポーティング時のリクエストに含まれるイベント数が一定数を越えるとサンプリングが発生し、正確な値を確認するための対応が必要になることがあります。
GA4ではこういった仕様の範囲内でしかデータを確認することができないため、分析する際はGA4プロパティ単体ではなく、BigQueryも併せてご利用することをお勧めします。
また、上記で上げた「データの保存期間」「(other)の回避」「サンプリングの回避」は、Google アナリティクス 有料版にアップグレードすることで解決することが可能です。
方法1. BigQueryを併用する
方法2. Google アナリティクス 有料版にアップグレードする
それぞれの解消方法について、詳しくご紹介します。
BigQueryは、Google Cloudが提供するサーバーレスデータウェアハウスです。GA4のようなデータの制限がなく長期的なデータ保存ができ、膨大なデータの解析を効率的に行うことが可能です。
BigQueryはGA4プロパティと連携することで、Firebaseで計測したアプリデータをエクスポートしてBigQuery側で分析ができるようになります。
※BigQueryを利用するにはデータの保存やクエリの実行に費用が発生します(無料枠を超えた場合)。
BigQueryを利用した場合のメリットは、大きく分けて5つあります。
BigQueryでは、SQLを使ってデータを自由に操作できます。
SQLを駆使すればGA4の機能では実現できない複雑な集計や、複数テーブルを結合した関連情報の統合、データの変換・加工等、ニーズに合わせた様々な使い方ができます。
BigQueryは、大量のデータを高速かつ効率的に処理できることが特徴です。これにより、データ分析の生産性向上やコスト削減に大きく貢献します。
FirebaseやGA4では難しい、年間データのトレンド分析や、億単位のイベントデータの分析を行うことができます。
Firebaseで計測したデータと外部データをBigQuery上で組み合わせて、データ分析することが可能です。例えばアプリ内での購買履歴と顧客データ(CRM)を統合して、どの顧客層が最も購入金額が多いのかを把握したり、アプリのアクティブユーザーデータと天候データを統合して、天候がアプリの使用にどのように影響しているかを把握することもできます。
外部データとの統合により、アナリティクスデータ単体では把握できなかったユーザーの傾向を掴むことができるため、エンゲージメントやコンバージョンの最適化に役立ちます。
BIツール(Looker StudioやTableauなど)と連携し、データを直感的な操作でビジュアライズできるため、複数のデータソースを組み合わせたユーザーの行動データを簡単にクロス集計したり、グラフ化することが可能です。
データを可視化することによって、FirebaseやGA4プロパティの操作方法を知らない方でも、データ状況を把握することが容易になります。
BigQuery内で利用できる機械学習機能(BigQuery ML)は、過去のデータ分析にとどまらず、未来のユーザー行動や施策の結果を予測する機能が活用できます。
BigQuery MLでは、SQLを使って簡単に予測モデルを作成できるため、データサイエンティストだけでなく、マーケティングチームでも比較的簡単に利用できます。
上記のようにBigQueryを利用するメリットは多いため、Firebaseでアプリ計測を行う場合はGA4プロパティだけでなく、BigQueryを併せてご利用されるケースが増加しています。
BigQueryを利用すると様々なメリットがありますが、アナリティクスのデータ量を気にせず誰でも無制限に分析できるわけではありません。
Firebaseで計測したアプリデータは「イベント」という単位でBigQueryにエクスポートされますが、エクスポートできるイベント量はFirebaseと連携しているGA4プロパティの契約状況によって変わります。
無料版で利用可能な「標準プロパティ」は、1日あたり最大100万イベントまでの上限があります。しかし、Google アナリティクスの有料版の「360プロパティ」では、1日あたり最大 200億イベントをBigQueryにエクスポートすることが可能です。
プロパティの契約状況 |
詳細 |
標準プロパティ | 1日あたり最大100万イベント |
Google アナリティクス 360 プロパティ | 1日あたり最大200億イベント |
標準プロパティでもBigQueryエクスポートをご利用いただけますが、ユーザー数が多く大規模なサービスを運営している場合は、1日あたりのイベントのエクスポート上限に抵触する恐れがあります。標準プロパティで5日間継続して上限を超えるとエクスポートが停止されます。
イベント数が多いプロパティを有している場合は、ご希望通りの分析が実現できない可能性がございますので、Google アナリティクス 有料版のご利用をご検討ください。
GA4からBigQueryへのエクスポートが停止された!解決方法とは
Google アナリティクス 有料版へアップグレードすることで、「データの保存期間の延長」「(other)の回避」「サンプリングの回避」だけでなく、「データセットの設定エラーの解消」や「サブプロパティの作成」「Google広告連携におけるオーディエンス作成上限の緩和」「BigQueryへのエクスポートの上限緩和」「収集できるイベント上限の緩和」など、様々なメリットがあります。
今後、継続的にデータ活用をしていくことを考えると、有料版のGA4を契約することをおすすめします。
イー・エージェンシーでは、Google アナリティクス 360の導入支援からデータ活用コンサルティング・サポートまで、数多くの企業様に提供しております。
またFirebaseやBigQueryの分析上の課題についても、弊社での支援実績も多数ございます。
弊社の支援サービスに関するご質問などございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。
本動画では、イー・エージェンシーから「Google マーケティング プラットフォーム(GMP)」をご契約された際の「付帯サービス」や「具体的な成功事例」について、動画でわかりやすくご紹介します。
「 Google アナリティクスの無料版と有料版の違い」や「そもそもGoogle マーケティング プラットフォーム(GMP)とは何か?」など、GMPツールについてもご紹介しています。
イー・エージェンシーは、「Google マーケティング プラットフォーム(GMP)」の認定セールスパートナー、「Google クラウド プラットフォーム(GCP)」の認定パートナーです。
また弊社はGoogleより2021年上半期における Google アナリティクス 4 プロパティ(GA4)の数多くの導入支援実績を評価され、認定セールスパートナーとしてアワードを受賞しております。
これまでの豊富な実績を元に、GA4導入・移行をお客様のビジネスに寄り添い支援させていただきます。
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