アプリユーザーに情報を届けるプッシュ通知は、施策の成否を分ける重要なチャネルです。しかし多くの企業では、「通知が届いた数」「通知を開いた数」といった基本的なデータ確認に留まってしまう傾向があります。
なぜなら、プッシュ通知の計測は仕組みが複雑で、公式情報だけでは具体的な分析方法や設定の全貌が見えにくいためです。
その結果、「アプリプッシュ通知の分析方法がわからない」 「Googleアナリティクス4プロパティ(以下、GA4)やFirebaseでプッシュ通知の計測仕様が把握できていない」といった課題に直面しているのではないでしょうか?
本記事では、プッシュ通知とは何なのか、Firebase Cloud Messaging (以下、FCM)を使うことのメリットは何なのか、という基礎知識から解説しつつ、上記のような課題の解決方法を提案します。
公式ヘルプやデベロッパーガイドを読んでも「何をすべきか」が見えなかった方も、この記事を読み終える頃にはプッシュ通知の計測と分析の全体像が把握でき、データに基づき施策を改善するための具体的なアクションを見つけられるはずです。
INDEX
1.プッシュ通知とは
プッシュ通知とは、アプリの利用状況にかかわらず、スマートフォンの画面上にメッセージやアラートを直接表示できる機能です。
ユーザーがアプリを閉じている状態でも通知が届き、スマートフォンの画面の上部やロック画面に表示されるため、ニュース速報やタイムセール開始など、鮮度の高い情報を瞬時にユーザーへ届けられます。
また、通知をタップするだけで関連するアプリの画面に直接遷移させることができるため、しばらくアプリを利用していない休眠ユーザーに、お知らせやキャンペーンでアプリへの復帰を促す目的でも活用されます。
2.Firebase Cloud Messaging(FCM)を使ってプッシュ通知を送信する
プッシュ通知をアプリに配信するには、様々なサービスが利用可能ですが、Googleが提供するアプリ開発プラットフォーム Firebase の主要機能の一つである「FCM」は、GA4を利用する企業にとって最も効果的な配信手段です。
FCMは高い到達率と豊富な機能が評価され、GA4を導入済みの企業で広く採用されています。
- Googleのインフラを利用しているため、大規模なアプリに対しても、メッセージの高い到達率と迅速な配信が可能です。
- メッセージの送信量に制限がなく、無料で利用できます。
- 一つのバックエンド(サーバー)から、Android、iOS、Webなど、異なるプラットフォームのアプリに対して同じメッセージを簡単に送信・管理できます。
- FirebaseとGA4を連携することで、GA4で作成したオーディエンスをFCMの送信先として直接指定できる他、通知がデバイスに届いたことや、通知をタップしてアプリを開いた数をGA4で検知することが可能です。

3.FCMを利用してプッシュ通知を行った場合のデータの特長
FCMで送信したプッシュ通知の効果を測る際の大きな特長は、FirebaseとGA4の連携によってユーザーの行動が自動で可視化される点にあります。
具体的には、ユーザーが通知を受信したり開いたりしたタイミングで、以下のような自動イベントが計測されます。
| 自動で計測されるイベント | 計測されるタイミング |
| notification_receive |
アプリがバックグラウンドで動作している状態、またはアプリが終了している状態で、FCM から送信された通知をデバイスが受信したときに計測されるイベントです。Android端末でのみ計測されます。 |
| notification_foreground | アプリがフォアグラウンドで動作している状態で、FCMから送信された通知を受信したときに計測されるイベントです。 |
| notification_open | FCMから送信された通知をユーザーが開いたときに計測されるイベントです。 |
| notification_dismiss | FCMから送信された通知をユーザーが閉じたときに計測されるイベントです。Android端末でのみ計測されます。 |
※これらのイベントはFirebaseプロジェクトまたは Firebaseプロジェクトと連携しているGA4でご確認いただけます。
上記の自動計測イベントだけでも、通知の受信数や開封数といった基本的な効果は把握できますが、複数の通知を同時期に配信している場合、どの通知のデータなのかを見分けることは困難です。また、通知経由でのアプリ起動は参照元情報が(direct)/(none)で計測されるため、参照元/メディアごとの分析もできません。
では、どうすれば個別の通知の効果を把握し、参照元情報で詳細に分析できるのでしょうか?その具体的な方法について、次の章で詳しく解説します。
4.プッシュ通知の効果を測定するための追加設定
前章で述べた通り、自動計測データだけでは対応できない「通知ごとの効果の特定」や「正確な参照元情報の把握」を実現するためには、プッシュ通知送信時に追加の設定が必要です。
具体的には次の2つの設定方法がありますが、分析ニーズや実装の難易度に応じて、適した方法をご選択ください。
- 方法1:プッシュ通知で「アナリティクスラベル」を設定する
- 方法2:任意の参照元情報を付与する
以下、それぞれの目的と実装難易度、そして設定方法詳細についてご説明いたします。
方法1:プッシュ通知で「アナリティクスラベル」を設定する
この方法では、どのプッシュ通知からの流入か判別できる値をカスタムディメンションで計測します。設定難易度は低めですが、イベントスコープでのカスタムディメンションの計測になるため、セッションやユーザースコープでの分析をする場合はセグメントを利用する等、工夫が必要です。
<設定方法>
Firebaseの管理画面上で「通知の作成」を設定する際、「アナリティクスラベル」に、どのような内容のプッシュ通知なのかがわかる値をご設定ください。
※Firebaseプロジェクト左側メニューの[Messaging] > [新しいキャンペーンを作成] > [通知]から「通知の作成」に進むことができます。
次に、この値をGA4のレポート上に反映させるため、GA4プロパティ側でカスタムディメンションの登録を行います。
イベントスコープのカスタムディメンションで、イベントパラメータに「label」とご設定いただくと、先述の「アナリティクスラベル」がGA4レポート上で確認できるようになります。

※GA4に「アナリティクスラベル」の値を確認するための専用のディメンションはご用意がございませんので、カスタムディメンションの登録を行う必要があります。
<レポートの見方>
「アナリティクスラベル」で計測された値は、自動イベント「notification_receive(プッシュ通知を受信)」や「notification_open(プッシュ通知を開く)」など、「notification_」から始まるイベントでのみ確認できるイベントスコープのデータとなります。
▼レポーティングイメージ

例えばプッシュ通知から流入し、その後キーイベント(例:purchase)が計測されたとしても、キーイベントにラベルの値は紐づきませんので、セグメントでラベルの値を活用してデータ抽出する等、分析の際は工夫が必要です。
▼セグメント活用例

※このセグメントでは、「test_label」というラベルが付けられたプッシュ通知を開いた後、そのセッション内でpurchase(購入)したユーザーのデータを抽出しています。
方法2:任意の参照元情報を付与する
この方法は、ユーザーがプッシュ通知を開いてアプリを起動したときに、任意の参照元情報を付与する計測です。設定難易度は高めですが、この方法を採用すると参照元情報を確認するだけでどのプッシュ通知からどれだけ流入があったかを一目で確認することができます。また、他の参照元情報を比較した分析も容易になります。
<設定方法>
※一般的な対応例です。すべての環境に適した実装ではありませんので、ご注意ください。
① プッシュ通知側で、カスタムデータを設定する
Firebaseの管理画面で、プッシュ通知の本文やタイトルとは別に、カスタムデータ(ユーザーには表示されない情報)として流入元がわかる情報を設定します。

※Firebaseの[Messaging]メニューで、「新しいキャンペーンを作成」のボタンからプッシュ通知を新規作成する際に設定できます。
② アプリ側で、カスタムデータを解析し、GA4に送信する
プッシュ通知側で設定したカスタムデータを、アプリ側で必要なパラメータを取り出し、イベント「campaign_details」のパラメータとしてGA4に送信します。
イベント「campaign_details」のパラメータ「source」や「medium」に付与された値が、ディメンション「セッションの参照元/メディア」や「セッションの手動の参照元/メディア」に反映されます。
※「campaign_details」は、アプリからの参照元、メディア、キャンペーンを手動で設定するために使用されるイベントです。
<レポートの見方>
「セッションの参照元/メディア」等の参照元情報が確認できるディメンションで、プッシュ通知からの流入を検知することができます。

「セッションの参照元/メディア」はセッションスコープのディメンションですので、プッシュ通知からアプリを起動して開始したセッションで計測されたすべてのイベントに、設定した参照元情報が紐づきます。
なお、この方法を実施する場合、環境によって上記とは異なる実装が必要だったり、実装で考慮しなければいけない注意点が存在します。
環境ごとの実装の違いや計測のための具体的な準備は、専門知識がないと予期せぬトラブルに繋がりかねませんので、お困りの際はお気軽にイー・エージェンシーにご相談ください。
5.FCMを利用してプッシュ通知を行った場合のご留意点
FCMの利用には多くのメリットがあり、設定次第で任意の参照元も計測する柔軟性もありますが、Android端末に向けてプッシュ通知を送信してGA4でデータを確認する場合には注意が必要です。

<注意点①:ユーザー数とセッション数の急増>
Android端末に向けてFCMでプッシュ通知を送信すると、「notification_receive(プッシュ通知を受信したタイミングで計測)」と「notification_dismiss(受け取ったプッシュ通知を開かず削除したタイミングで計測)」の2つのイベントが自動で計測されます。
これらのイベントはアプリを起動していなくても計測されるため、プッシュ通知を受け取ったり通知を削除するだけでGA4上で1セッション・1ユーザーとしてカウントされてしまいます。
※ユーザーがアプリを起動しなくても、上記のイベントが計測されただけでセッションやユーザーのカウントがされる仕組みです。
そのため、Android端末向けにプッシュ通知を行った日付では、GA4の総ユーザー数やセッション数が急増する場合があります。
<注意点②:セッションの参照元/メディアへの影響>
Android端末で「notification_receive」や「notification_dismiss」が計測された場合、これらのイベントが計測されたタイミングによって計測される参照元が異なります。
パターン①:セッションの途中で「notification_receive」や「notification_dismiss」イベントが計測された場合
⇒セッション開始時に計測された参照元情報がセッションの参照元/メディアでレポーティングされます。
パターン②:セッションが終了した後、その日のうちに「notification_receive」や「notification_dismiss」イベントのみが計測された場合
⇒直前に計測されていたセッションの参照元/メディアと同じ値がレポーティングされます。
※セッションIDも同様で、直前に計測されたセッションのIDがGA4とBigQueryの両方で確認できます。
パターン③:セッションが終了した後、翌日以降に「notification_receive」や「notification_dismiss」イベントのみが計測された場合
⇒セッションの参照元/メディアは、(not set)がレポーティングされます。
※セッションIDは直前に計測されていたセッションIDがGA4では紐づきます。BigQueryではセッションIDがnullになります。
<notification_receive や notification_dismissイベントの影響を受けないデータを確認する方法>
「notification_receive」や「notification_dismiss」イベントを除外するイベントスコープのセグメントを作成するか、フィルタでこれらのイベントを除外してご確認ください。
なお、「notification_receive」や「notification_dismiss」イベントが計測されると「総ユーザー数」の指標は増加しますが、「アクティブユーザー数」は影響を受けない場合がございます。
これは、「総ユーザー数」が指定した期間にイベントを1つでも計測したユニーク ユーザーの数をカウントするのに対し、「アクティブユーザー数」は指定した期間にサイトまたはアプリを利用したユニーク ユーザーの数をカウントする仕様の違いによるものです。
「総ユーザー数」が急増している場合は、「アクティブユーザー数」の指標のご利用をご検討ください。
もし一時的なフィルタリングではなく、データ構造として当該イベントを恒久的に除外したいとお考えの場合は、 GA4の有料(360)版でサブプロパティを作成することで、特定のイベントをあらかじめ除外したプロパティで分析を行えます。
GA4の有料(360)版のご契約については、イー・エージェンシーまでお問い合わせください。
複雑な設定や高度な分析は、専門家であるイー・エージェンシーにご相談を!
いかがでしたか?
本記事を通してプッシュ通知の分析のために「何をすべきか」を掴んでいただけましたでしょうか。開封数といった基本指標だけでなく、FCMとGA4の連携を最大限に活用し、通知ごとの成果や流入経路を正確に把握することが、データに基づいた効果的な施策改善の第一歩となります。この正確な計測こそが、アプリの成長を加速させる鍵です。
一方で、より深いインサイトを得るための高度な計測設計には、アプリの環境や状況に応じた専門的な知見と慎重な実装が求められます。予期せぬトラブルを避け、確実に成果に結びつけるためには、専門知識が必要です。計測設計や実装でお困りの際は、お気軽にご相談・お問い合わせください。
GMP導入・活用支援 資料ダウンロードのご紹介
本資料は、イー・エージェンシーから「Google マーケティング プラットフォーム(GMP)」をご契約された際の「付帯サービス」や「具体的な成功事例」などをご紹介。
GA360の導入を検討されている企業様や、データ分析を活用したマーケティング施策を強化したい方に最適な内容です。是非ご覧ください。
GA4を導入するならイー・エージェンシーにご相談ください

イー・エージェンシーは、「Google マーケティング プラットフォーム(GMP)」の認定セールスパートナー、「Google クラウド プラットフォーム(GCP)」の認定パートナーです。
また弊社はGoogleより2021年上半期における Google アナリティクス 4 プロパティ(GA4)の数多くの導入支援実績を評価され、認定セールスパートナーとしてアワードを受賞しております。
これまでの豊富な実績を元に、GA4導入・移行をお客様のビジネスに寄り添い支援させていただきます。
まずはお気軽にご相談ください。
お客様のデータ活用を伴走型で支援いたします。
私たちは、ビジネス課題を解決する支援を行っております
サービスについてお気軽にご相談・お問い合わせください
この記事を書いた人
お困りごとを解決するプロフェッショナル
Google マーケティングプロダクトをご利用いただくお客様の日々の課題や疑問を解決するご支援を担うチームです。
年間2,000件を超えるお問い合わせで蓄積した豊富なノウハウを元に、お客様の日常業務に支障が出ないように、迅速に課題を解決してまいります。
また、Google社が発信する最新機能やアップデートの情報をいち早くお知らせできるよう、使命感を持って取り組んでおります。
