パーソルキャリア様 AI活用事例 応募意欲予測AIでリマーケティング広告のCPAを23%削減、パーソナライズAIでCVR向上にも貢献

パーソルキャリア株式会社様は、アルバイト・パートサービスの「an」、転職サービスの「doda」をはじめとしたさまざまな人材サービスを手掛け、アルバイト・パートから、新卒採用、中途採用、管理職・エグゼクティブ層、バイリンガル人材まで、幅広い領域の仕事探し・採用活動を支援されています。

今回のプロジェクトでは、アルバイト・パート情報サイト「an」において、サイト利用者の行動特性に合わせたサイトのパーソナライズ表示や広告配信の最適化を目指し、イー・エージェンシーのAIモデル開発支援サービスを導入していただきました。

広告CPA23%カット、さらにはCVR向上を実現

これまでパーソルキャリア様では、Google アナリティクス 360によって詳細なサイト内行動データおよびページ内行動データの取得を行っていて、イー・エージェンシーではそうしたデータ取得基盤の導入支援とサポートを担当してきました。

そこで、Google アナリティクス 360を軸にして取得したユーザー行動データを活用し、サイト訪問者ごとの応募意欲を予測するAIを開発して、その予測に応じたパーソナライズ施策を運用することによって、広告CPA23%カット、さらにはCVR向上を実現しました。

施策実施のポイント

●Google アナリティクス 360でサイト内行動データおよびページ内行動データを詳細に取得し、求人応募データとのデータ連携をGoogle BigQuery上で実施していた。

●Google アナリティクス 360による行動データと求人応募データをもとに「応募意欲が高いユーザーの予測AI」と「応募につながりやすい求人情報の予測AI」を開発し、高精度な予測を行えるAIモデルを構築した。

●AIによる予測結果をもとに「an」サイトでのパーソナライズ表示とリマーケティング広告の配信最適化を実施した。

施策の成果

●リターゲティング広告のCPAを23%削減。
応募意欲の高いサイト訪問者に対してのみリマーケティング広告配信を実施。

●スマートフォンサイトでの求人情報のパーソナライズ表示によりCVR向上。
すでに協調フィルタリングによるレコメンデーションエンジン(クラウドサービス)が導入されていたが、その状態と比較してもCVRが向上。

※特定セグメントでのフィージビリティスタディ結果による実績。

プロジェクトインタビュー

左から、パーソルキャリア株式会社
Works事業部 プロダクト&マーケティング企画統括部 データビジネス部
データプラットフォームグループ マネジャー 武本 直也 氏
同 アナリティクスグループ 野中 佳子 氏
パーソルプロセス&テクノロジー株式会社 亀田 剛志 氏
※所属は2019年4月時点

AIモデルの開発プロジェクトをスタートした狙いは何でしょうか?

武本氏

AI・機械学習は絶対に役に立つ、試してみたいという思いはあったものの、では何ができるのか、何をどうすればいいのか?という具体的な施策へは落とし込んでいませんでした。その一方で、AI・機械学習には、既に蓄積してある膨大なアクセスデータと求人データが使えるだろうと考えていました。

イー・エージェンシーにはGoogle アナリティクス 360の導入においてアクセスデータ取得の要件定義から実装・運用まで依頼していたこともあり、どういうデータがどういう状態で取得できているのか把握していて、また、AI活用に適したビジネスモデルやサービス内容、ユーザーの行動についても理解していると認識していました。

そんな背景があったところにイー・エージェンシーからAI・機械学習プロジェクトの提案があり、プロジェクトがスタートしました。実際、初期コミュニケーションはだいぶ省エネできたと思っています。

プロジェクトは最初からスムーズに進行しましたか?

武本氏

当初は機械学習についての理解もなかったので、要件定義で方向性を固めていく段階で最初の苦労がありました。

例えば、機械学習を活用すべき自社のサービス課題は何なのか? AIを活用することが目的にならないように意識しながら課題設定に注力しました。さらに、課題を解決するためにはどんなモデルが必要なのか? それには予測系かつ人間拡張型である、顧客行動の未来予測をするAIが適していそうだ、とか――。

そうやって検討を重ねていく中で、「ユーザーの行動予測によるパーソナライズ」に機械学習を使っていくという結論になりました。

野中氏

AI・機械学習の活用について検討を進めていく中で、事業部のマーケティングメンバーもAI活用の検討プロセスを学ぶべきなのでは? と考えて、社内でAI勉強会を実施するなど、社内教育という面でも成果を作ることができました。

亀田氏

今回のAI・機械学習のプロジェクトは現場のメンバーからボトムアップで始まったものでしたが、未経験のメンバーのみでスタートしており、イー・エージェンシーにはプロジェクトが立ち上がる前からしっかりと協力をしていただけました。

さらに、他の社内メンバーも含めて「機械学習とは?」というような基本理解の勉強会も開催していただけたので、プロジェクトに対して社内全体の理解が深まるのが早かったと思います。

今回のプロジェクトの結果だけでなく、AI・機械学習の基礎知識と検討ステップについても、事業部メンバーの多くが勉強会を通して理解することができたので、今後は他の事業課題でもAIによる解決に繋がっていくと考えています。

AIをうまくビジネスに活用していく上で、大切なポイントは何でしょうか?

武本氏

要件定義には、ビジネスモデルやサービス内容、ユーザーに関しての肌感覚、データの知見が必須条件になることを痛感しました。

AIモデルの開発ツールは数多く出てきていますが、それだけではAI導入はうまく行かないと思います。自分たちのビジネスと、保持しているデータとを理解した人材が、いかにAIをサービスに取り込んでいくのか? 活用していくのか? そういうことが重要なのではないでしょうか。

また、事業のKPIに近い施策でないと結局のところ評価できないので、「本当に必要なものをつくる」というのが、当たり前のことなんですけれども、非常に大事なポイントであると考えています。

あと、マーケティング施策を実施する上では、周辺のシステムやツールとの連携が必要ですが、そのための開発費用や時間が膨大に掛かるのが課題となります。

イー・エージェンシーのAI開発・運用プラットフォームは、Google Cloud Platform上に構築されているので、Google アナリティクス 360はもちろんですが、Google系広告プロダクトとも連携しやすく、費用や時間も抑えられて良いと感じています。

野中氏

プロジェクトを開始して早い段階でAI・機械学習モデルの精度を高めることができましたが、それがマーケティングの成果に繋がるとは限りません。いかにAI・機械学習モデルをサービスに組み込んでいくか? について検討することが重要であり、今後も試行錯誤していく必要があると感じています。

今回のプロジェクトでは、最終的にはユーザー特性に合わせたパーソナライズを行っていくという目標があります。そのためには、システム的な制約がある中で、どんなマーケティング施策を打っていくのか? そこは人間が考える必要があり、今後も重要な役割になると考えています。

亀田氏

AI・機械学習モデルの精度と施策の有効性を適切に評価するためには、Webサイト上のデータをしっかり取得することにも注意を向けなければならないと思います。機械学習に限らず、データを使った施策には、前提として、精度の高いデータ収集と正確なデータ定義の把握が必要です。良い施策を行うためにも、Webサイト等のメディアが変化していくのに合わせて、データ収集やデータ定義のメンテナンスが大切だと感じています。

また、武本からもお話ししましたが、Google系プロダクトで統一的にデータ取得とデータ統合ができているのはメリットだったのではないでしょうか。

プロジェクトの提案から開始まで非常にスピーディーな印象がありました。

武本氏

機械学習プロジェクトには、まず取り組んでみないと成果が分からないという面もありますので、そもそもチャレンジしやすい文化があるかどうかというのは、第一歩として重要なのではないでしょうか。

野中氏

われわれとしては最初、AIが簡単に答えを出してくれると思っていましたが、人間が考えて決めなければならない部分もあることに気付きました。そこを理解するのに時間が掛かったので、本当はもっと早くプロジェクトを進行できたんじゃないかと、実は課題に感じていたくらいです(笑)。

亀田氏

イー・エージェンシーには、AI開発に留まらず、システム実装の検討などまで行ってもらったので助かりました。AIに限らず、初めて取り組むプロジェクトでは、業務分担を切り分けにくいことがよくありますが、今回はシステム開発会社も含めて各社が柔軟に取り組めたのが良かったと思います。

今後のAI・機械学習プロジェクトの展開イメージを教えてください。

武本氏

まずは、応募意欲の予測AIモデルによって、広告施策を最適化していくこと。それから、求人情報のパーソナライズ施策に、システム連携を考えながら取り組んでいくことが重要と考えています。

野中氏

社内勉強会で出したAIのアイデアもありますので、今後も継続的に検討していきたいです。ユーザーのサイト上の行動を捉えてリアルタイムで施策を実施するなど、どんどん取り組んでいきたいです。

▼【関連セミナーレポート】
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この記事を書いた人
村松

マーケティングプランナー