国民的人気を誇るハローキティを筆頭に、ポムポムプリン、マイメロディ、クロミなど、魅力的なキャラクターを次々に生み出してきた株式会社サンリオ。その事業領域は広く、近年は海外展開も好調だといいます。ここでは、今や世界的なIPホルダーとなった同社が、さらなるビジネス拡大に向けて、イー・エージェンシー伴走のもと「DMO(Data Management Office)」を立ち上げた背景と成果を、本プロジェクトを牽引するCX推進課の皆さんに伺います。
株式会社サンリオ
デジタル事業本部 デジタル事業開発部 CX推進課
シニアマネージャー
鈴木 理恵 様
株式会社サンリオ
デジタル事業本部 デジタル事業開発部 CX推進課
顧客体験プラットフォーム戦略推進担当
田口 歩 様
INDEX
バラバラだった顧客接点をつなぐ『Sanrio+』
改めてサンリオがどのようなビジネスを展開している会社なのかを教えてください。
田口様:サンリオはギフト商品の企画・開発・卸からスタートした会社です。1960年の創業当初から「ソーシャルコミュニケーションビジネス」という理念のもと、お客さまを笑顔でつなぐビジネスを展開してきました。1973年に自社オリジナルキャラクター「コロちゃん」を発表して以来、今日に至るまでおよそ400ものキャラクターを自社で企画・開発してきたことがサンリオならではの強み。この膨大なIP(知的財産)を基盤に、現在では物販ビジネス、ライセンスビジネス、さらにはテーマパーク事業まで幅広く事業を拡大しています。とりわけ近年は長年の地道な認知向上活動が実を結び、海外展開が極めて好調です。国内についても、コロナ禍以降、インバウンド需要が爆発的に伸びています。

そんなサンリオのデジタル領域における取り組みとその背景についてお聞かせください。
鈴木様:2020年7月に、サンリオグループ共通の顧客基盤となる会員サービス『Sanrio+(サンリオプラス)』を立ち上げました。その背景には、実店舗、オンラインショップ、テーマパーク「サンリオピューロランド」などが、それぞれ独自のIDで顧客管理をしていたことからお客さまの解像度を上げられず、有効な施策を打てずにいた問題があります。

まずは分断されている顧客情報を統一されたIDで統合する必要があると考えたわけですね。
田口様:その通りです。サンリオにまつわるさまざまな顧客接点を通してエンゲージメントを高めていき、お客さま一人ひとりの熱量やLTV(顧客生涯価値)を高めていく仕組みを作りたかったのです。私たちはこのコンセプトを「カスタマーエンゲージメントプラットフォーム」と名付けています。
『Sanrio+』において、そのコンセプトがどのように表現されているのかをもう少し詳しく教えてください。
田口様:Sanrio+はサンリオグループの共通ポイントサービスですが、お客さまは「ポイント(スマイル)を貯める」だけでなく、「自分が好きなキャラクターと絆(エンゲージメント)を深めてもらう」ことを主眼に置いている点が、『Sanrio+』の大きな特徴のひとつと言えるでしょう。例えば『Sanrio+』では会員証のデザインを22キャラクター分用意し、好きなものを選べるようにしています。これによりお客さまは、スマートフォンを通していつでもお気に入りのキャラクターに会いに行けますし、私たちもキャラクターにより興味を持ってもらえるような情報やクーポンをタイムリーにお届けすることができるようになります。こうした仕組みによって、ファンの熱量を高めていくことが『Sanrio+』最大の目的なのです。
『Sanrio+』アプリの会員証画面

顧客ID統合の裏側で露呈した、社内データの縦割り構造
顧客IDが『Sanrio+』によって統合された一方、社内のデータ管理体制においても課題があり、それが今回の「DMO」の設置へとつながったとお伺いしています。その課題についてもう少し詳しく教えていただけますか?
田口様:先ほどもお話したように、サンリオにはさまざまな顧客接点がありますが、お客さまから見れば、お店で買おうが、オンラインで買おうが「サンリオから買っている」ことに違いはありません。しかし会社側から見ると、物販、EC、テーマパークと担当部署が縦割りになっており、データが部署ごとに孤立した状態になっていました。同じお客さまなのに社内では情報が断絶、サイロ化されている。それでは『Sanrio+』でIDを統合した意味がありません。そのため、各部署に散在する情報を統合、整理し、全社的な視点でデータを扱える体制を整える必要がありました。
鈴木様:ただ、当時のサンリオにはデータマネジメントを専門とする人材がいませんでした。そこで、WebサイトのタグマネジメントやGoogle アナリティクス(以下、GA)導入・運用などでお世話になっていたイー・エージェンシーさんにご相談したところ、いくつかの取り組みを経て、「DMO」の設置をご提案いただきました。

DMOの設置を提案された時、どのように感じられましたか?
田口様:以前からデータ活用を全社に根付かせるためのミッションをどうスケールさせるかを考えていたこともあり、部門を横断してデータ計測⽅針の整備‧監視‧活⽤推進を専属で担うDMOという枠組みはとても魅力的に映りました。他にも選択肢はあったのかもしれませんが、それまでのお付き合いでイー・エージェンシーに大きな信頼感を抱いていたこともあり、これでやってみよう、と。
DMOを立ち上げるにあたり、どのようなゴールを設定しましたか?
田口様:当初のゴールとして「運用ルールの標準化と、それに基づいたデータ基盤の構築」を掲げています。将来的に管理すべきデータの種類も量もどんどん増えていくことになりますから、脆弱な基盤では話になりません。今後、新しい部署ができたり、新たなニーズが生まれたりした時でも柔軟に対応できるデータ基盤が必要だったのです。加えて、この取り組みを通じて「社内のデータリテラシーの底上げ」を実現したいという思いもありました。
ゴール到達に向けて、具体的にどのようなアクションを取ったのかを教えてください。
田口様:2024年夏にDMOを正式に発足させました。最初のステップとして、各部署が取り組んでいるデジタル施策の中で最も共通項となっているGAデータを優先することにしました。業務が細分化している中、まずは多くの部署に共通する基盤から着手し、効果を実感してもらうことが重要だと考えたからです。
具体的には現状の棚卸しから始め、秋冬にかけてGAと連動するUTMパラメーターの標準化を進めました。この際、イー・エージェンシーさんにご協力いただき、誰が運用しても決められたルールでパラメーターが発行できるツールを開発し、各部署に展開しています。
その後、2025年には「GA友の会」という社内コミュニティを立ち上げ、毎月のミーティングで各部署の興味関心や課題を吸い上げながら、GAデータ活用の浸透を促進。現在は、組織横断的なダッシュボードの導入や、社内向け問い合わせ窓口の運用も開始されており、DMOが全社のデータ活用をリードするフェーズに入っています。イー・エージェンシーには問い合わせへの対応も含め、ほとんどの実務を担当していただいています。
イー・エージェンシーが部署間の緩衝役となってデータ活用を推進
導入時にどのようなご苦労があったのかもお聞かせください。
田口様:まずぶつかった壁が、DMOを導入するための予算を獲得することでした。当時のサンリオには、Webのユーザー行動指標を明確な成果として評価・活用する文化がまだ育っていなかったためです。そこに投資することの意義を理解してもらうにはどうすればいいかを考える必要がありました。
鈴木様:これについては、せっかく導入したGAのデータの質を担保し、信頼性と有効性が確保された状態で運用するためには、一貫して管理する組織が不可欠であると説得することで承認を得ることができました。ちょうどGAを導入したばかりのころで、タイミングが良かったというのはあるかもしれません。
現場への導入はスムーズに進みましたか?
田口様:残念ながら現場においても、少なからず抵抗がありました。部署横断的な取り組みであるDMOは、どうしても社内の特定部署が他部署へ指示を出す構図になりがちです。当然、各部署にはこれまで積み上げてきた独自の目標や戦略があります。それゆえに、全社共通の新しいルールと現場の最適解がぶつかってしまい、調整に苦慮する場面が少なからずありました。
どのように解決したのかを教えてください。
田口様:イー・エージェンシーという第三者を間に立てることで部署間の対立を和らげることができました。一般論として、部署横断の取り組みはトップダウンでやらないとうまくいかないと言われていますが、今回のようにボトムアップでDMOを導入する場合、パートナーの力を借りるというのは効果的なアプローチかもしれませんね。
その後、現場のデータリテラシーを高めていくにあたって、どのような取り組みを行いましたか? なにか画期的なブレイクスルーのようなものはありましたか?
田口様:残念ながらありません(苦笑)。イー・エージェンシーの支援を受けながら、ひたすら地道なコミュニケーションを重ねていく日々でした。一気に何かを変えようとしないことが重要です。データをきちんと見ることで日々の業務が改善できるという小さな成功体験を、少しずつ積み上げていく。その地道な積み重ねが大切だと思います。

サンリオに「売上」と「利益」以外の共通言語が生まれた
DMOが発足してからもうすぐ2年、本格運用開始からは約1年が経過しようとしています。どのような変化を感じていますか?
鈴木様:全社でデータ活用が確実に浸透しつつあります。各部署の活用レベルも平準化され、底上げされてきました。それぞれの部署が、自分たちでデータを見てPDCAを回すというスタートラインにようやく立ててきていると感じています。
田口様:数年前には考えられなかったことですが、社内で「GAのデータ」をベースに会話ができる人が増えてきたことを強く感じています。これまで社内で、異なる事業部の人間が集まった時の共通言語となり得る数字は「売上」と「利益」しかありませんでした。しかし、DMO導入以降は、GA上のさまざまな指標が部署横断で会話する時の共通言語になりつつあります。
一連の取り組みにおけるイー・エージェンシーの支援について感想をお聞かせください。
鈴木様:DMOには日々、各部署の担当者から多くの問い合わせがあるのですが、担当者のリテラシーはまちまちでそれぞれ異なる対応が求められます。その点、イー・エージェンシーはヒアリングからアドバイスまでを非常に丁寧にやってくださるのがありがたいですね。私たちが関与せずともしっかり最後までフォローしてくださるのでとても助かっています。
田口様:世の中の伴走支援型サービスには、「半歩下がって」ついてくるものが多いと感じています。しかし、半歩下がってついてこられても、私たちの負荷は減りません。一方、イー・エージェンシーの伴走支援は極めてプロアクティブで、常に「半歩先」を行き、将来の課題を見越した提案をしてくれるのが頼もしかったですね。これは、サンリオという会社を深く理解していただけているからこそであると高く評価しています。

今後も「半歩先」を行くパートナーシップに期待
データ活用のスタートラインに立ったという今、中長期的なビジネスの展望や、今後DMOとして挑戦していきたいことについてお聞かせください。
鈴木様:私たちが最終的に目指しているのは、究極の「one to oneコミュニケーション」です。これから多様なIPが増え、さまざまな趣味嗜好の方がサンリオファンになってくださる中、それぞれのお客さまに対して適切なタイミングでコミュニケーションを取り、エンゲージメントを高めていく必要があります。そのために必要な、データを自ら見て活用できる人材を育てていくことが中長期的な目標です。
田口様:会社としての中長期戦略に「顧客接点の拡大」があります。これは、Webや店舗、テーマパークに加え、メタバースやゲーム事業、グローバル展開などでユーザーとの接点を広げ、世界中でサンリオファンを増やしていくというものです。その高い目標の実現のためには、新しい顧客接点で GAにとどまらないより幅広いデータを取得して、顧客体験向上のために今まで以上に安全で確実なデータ管理の取り組みが重要になると考えています。また、お客様のより良い体験の実現にデータを活用するためには、AIなどの新しい技術を積極的に導入していく必要も出てくるでしょう。
そして、それは私たちだけでは到底実現できません。イー・エージェンシーには、単なるツール面での支援にとどまらず、私たちが目指す高いビジネスゴールを共有し、共に達成を目指す「チームアップ」の姿勢で、今後も高い視座から伴走していただけることを期待しています。


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この記事を書いた人
GMP プレミアムサロンの企画運営担当
GMP プレミアムサロンを企画運営するマーケティング担当者で構成されています。Googleの最新情報の発信やウェビナー運営、動画・ダウンロード資料制作などマーケティング全般を手広く手掛ける縁の下の力持ち。
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